講演情報

[I-OR08-06]横隔神経麻痺回避プログラム有用性の検討

小沼 武司, 花岡 優一, 細谷 佑太, 小嶋 愛 (長野県立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

横隔神経麻痺、プログラム、横隔膜縫縮術

【背景】横隔神経麻痺は心臓血管外科手術合併症の一つで日本心臓血管外科データベースでは複雑心疾患において2~7%の発生が報告されている.特にフォンタン循環では影響が大きく術後胸水や腹水貯留が長期化し,横隔膜縫縮術を要するケースが多い.【方法】当グループでは2013年より横隔神経麻痺防止プログラムを開始しており,良好な結果を得ている.1.横隔神経走行の解剖学的特徴を十分に理解し,術中では可及的に神経を同定して愛護的操作を行う.2.横隔神経に影響を及ぼす可能性のあるIce slashは使用しない.3.熱メスを使用しない.【結果】プログラム開始後のおおよそ1318例において横隔神経麻痺1例,一時的な麻痺3例,横隔膜縫縮術0例で発生率は0.07%であった,横隔神経麻痺1例は両側BTS後のTOF心内修復術で,左胸腔BTS剥離時に生じた.また一時的な麻痺3例はPAPVR repairのSVC剥離時に生じ術後2ヶ月で回復.2例目はVSD, PA,中心肺動脈欠損,両側BTS術後,中心肺動脈を自己心膜ロールで形成する際に左肺門部剥離で生じ7ヶ月で回復した.3例目は大動脈縮窄複合の左横隔神経走行異常で両側肺動脈絞扼手術時に生じ2か月で回復した.手術時間の比較を行ったがFontan手術を例に平均時間(h) 開始前8.6±2.0,開始後6.1±1.4 (p=0.0001)と手術時間は延長することなはなく,横隔膜縫縮手術症例数も5:0と有意に減少していた.【考察】横隔神経麻痺回避プログラムによる手術時間の延長はなかった.発表では横隔神経麻痺発生例の手術ビデオを検証して術中発生リスクについて検討したい.また横隔膜縫縮手術によってもフォンタン循環特有の血流パターンに影響しないという報告もあるが,横隔神経麻痺発生による循環への影響,横隔膜縫縮手術について文献的検討も行いたい.【結論】横隔神経の解剖学的特徴を理解し術中操作に留意するプログラムによって横隔神経麻痺発生の抑制が可能であった.