講演情報
[I-OR09-01]先天性心疾患術後症例に対するアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬の導入状況
○浅田 大, 海陸 美織, 加藤 周, 西野 遥, 林 賢, 長野 広樹, 森 雅啓, 松尾 久実代, 石井 陽一郎, 青木 寿明 (大阪母子医療センター循環器科)
キーワード:
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬、先天性心疾患、腎機能
【はじめに】アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)であるサクビトリルバルサルタンの慢性心不全に対する生命予後改善効果が示されているが、先天性心疾患(CHD)術後症例に対する投与の報告は少ない。【目的】当院におけるCHD術後症例に対するARNIの導入状況を明らかにすること。【方法】これまでARNIを投与したCHD術後症例を後方視的に検討した。【結果】計15例のCHD術後患者に投与し、5例が腎機能悪化のため投与を中断していた。なお、腎機能悪化は、血清クレアチニン(Cre)値が投与前後で20%以上上昇した症例とした。導入成功10例と不成功5例を比較検討すると、年齢(y); 18.9±9.9 vs 16.1±10.3(p=0.62), 開始量(mg/kg); 1.5±0.8 vs 1.0±0.6(p=0.23), 体心室駆出率(%); 54±8 vs 49±16(p=0.41), 血清Cre(mg/dl); 0.65±0.26 vs 0.64±0.21(p=0.91), 推算糸球体濾過量(eGFR)(ml/min/1.73m2); 93.9±27.5 vs 74.1±7.0(p=0.14), 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)(pg/ml); 59.6±72.7 vs 322.0±436.2(p=0.08), 体心室拡張末期圧(EDP; mmHg); 10±4 vs 15±3(p=0.06), Fontan術後症例; 7/10 vs 2/5(p=0.26), NYHA; 2 vs 4(p=0.02)であった。不成功例では5例中4例が投与開始後3ヶ月以内と早期に腎機能悪化を来し投与を中止した。また、導入成功例の投与開始前後を比較すると、BNP (pg/ml); 44.3±42.1 vs 26.6±24.9(p=0.27)と、ARNI投与時に指摘されているBNPの上昇は認めなかった。【考察】導入不成功例ではNYHA分類が有意に高く、BNP・EDP圧が高い傾向を認めた。また、投与前のCreに有意差はない一方、eGFRはやや悪い傾向を認め、腎機能評価にeGFRも検討する必要があると考えられた。一方で、Fontan術後症例の割合に有意差はなく、単心室修復症例においても安全に投与できることが示唆された。【結語】NYHA分類・BNP・EDPが高い、eGFRが低い症例では慎重にARNI投与を開始する必要がある。