講演情報
[I-OR09-05]フォンタン術後患者における妊娠出産とその後の長期的予後
○島田 衣里子, 西村 智美, 朝貝 省史, 稲井 慶 (東京女子医科大学 循環器小児・成人先天性心疾患科)
キーワード:
フォンタン手術、心疾患合併妊娠、成人先天性心疾患
【背景】妊娠可能年齢に達する先天性心疾患のある女性の増加にしたがってフォンタン術後患者でも妊娠出産を希望する患者が増加しているが、その周産期管理には慎重な対応を要する。【目的】当院におけるフォンタン術後患者の妊娠出産やその後の長期的予後について検討すること。【方法】1997年1月から2024年12月までに当院で妊娠出産管理を行ったフォンタン術後症例について後方視的に検討した。【結果】期間中に当院で管理されたフォンタン術後患者の妊娠出産は32名で52妊娠であった。52妊娠中24妊娠(42%)は流産であった。流産症例の多くは12週以前の自然流産であったが3症例が在胎19から21週の死産であり、いずれも絨毛膜下血腫を合併していた。うち1例は娩出時に大量出血となり輸血を要した。一方、出産は28症例で平均在胎週数は33±3(26-38)週、出生時体重の中央値は1745g(769-2404g)だった。周産期の心血管合併症を15例(53%)に認め、心不全13例、上室性頻拍4例に認めた。産科的合併症は17例(61%)に認め、絨毛膜下血腫を9例に認めた。血栓塞栓性合併症はなく、1例が出産時の大量出血により輸血を要した。新生児の合併症としては早産児25例、Small for date児13例、新生児死亡1例だった。出産後の平均フォローアップ期間は10±7年(0.3-25年)で死亡2例、加療を必要とする肝腫瘤を発症した症例を2例に認めた。【結語】フォンタン術後患者の妊娠出産では既存の報告の通り流産率が高く、早産や絨毛膜下血腫といった産科的合併症を多く認めた。また、循環器的合併症も多く、妊娠中・分娩後の注意深い管理が必要であった。長期的予後として遠隔期にさまざまな問題が起こる症例もあり、フォンタン術後患者での妊娠出産管理には予後を見据えた十分なカウンセリングと循環器科・産科・新生児科・麻酔科・助産師などによる専門的な診療が不可欠である。