講演情報

[I-OR09-06]成人診療科へのトランジション時点での、先天性心疾患患者の病状理解や就職状況に関しての検討

高砂 聡志1, 椎名 由美1, 杉渕 景子2, 木島 康文1, 丹羽 公一郎1 (1.聖路加国際病院 心血管センター 循環器内科, 2.聖路加国際病院 心血管センター 看護師)
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キーワード:

移行期医療、成人先天性心疾患、患者教育

【背景】多くの先天性心疾患をもつ患児が成人期に達するようになり、成人診療科へのトランジションに向けた移行期患者教育の重要性が高まっている。【目的】トランジション時点での患者自身の病状理解、就労や妊娠、今後の病状変化への見通しについての現状を評価する。【方法】当院の成人先天性心疾患外来を初診した患者の、初診時における問診票や初診問診内容を診療録から後方視的に評価する。【対象】2022年1月から2024年12月の間、小児医療からのtransitionを目的に当科へ紹介された54症例。【結果】紹介時点の年齢中央値は22歳(15~37歳)。心室中隔欠損や心房中隔欠損などの単純なCHDの未手術/術後19例、複雑CHDの二心室修復術後23例、Fontan手術後12例であった。自身の病名正答率は93%、これまでの治療歴の正答率も93%と良好であったが、原疾患および治療後の血行動態についての理解が十分な患者は20名(37%)と低かった。今後の心不全、不整脈発症リスクをいずれも説明されていないと回答したのは30例(56%)と多く、Fontan症例に限っても6例(50%)が説明されていないと回答した。すでに就職していたのは33例で、このうち身体障害者手帳が取得可能な状況で実際に取得しているのは15例/24例(63%)、身体障害者枠での就職は3例のみで大部分は普通枠での就職であった。未就職の21例のうち身体障害者手帳を取得しているのは4例のみで、21例すべての患者が身障者雇用促進法や特例子会社制度の知識はないと回答した。感染性心内膜炎予防の十分な理解があったのは11例(20%)と非常に少なかった。女性患者29例のうち、妊娠出産のリスクについて説明を受けたと回答したのは10例(34%)のみであった。【考察】移行期の患者教育は未だ不十分と考えられ、特に将来の晩期合併症に関する理解が不足している。また就労面、妊娠出産に関する認識も不十分であり、移行期支援体制のさらなる充実が望まれる。