講演情報
[I-OR10-01]マルファン症候群の僧帽弁疾患における表現型・遺伝子型の関連に関する解析
○河島 裕樹1, 野木森 宜嗣1, 土居 秀基1, 西木 拓己1, 小澤 由衣1, 水野 雄太1, 榊 真一郎1, 白神 一博1, 益田 瞳1, 武田 憲文2, 犬塚 亮1 (1.東京大学医学部附属病院 小児科, 2.東京大学医学部附属病院 循環器内科)
キーワード:
マルファン症候群、フィブリリン1、遺伝子型
【背景】マルファン症候群はフィブリリン1(FBN1)遺伝子の変異により心大血管を含む全身の組織に異常を来す。僧帽弁疾患は外科的な治療を要することもあり,発症リスクを遺伝子型から推測することが重要である。遺伝子型はナンセンス変異やフレームシフト変異により早期に終止コドンが生じるPTC群とミスセンス変異などによるinframe変異群に大別され,PTC群は大動脈疾患を発症しやすいことが既知である。Exon 25-33(新生児領域)は,新生児マルファン症候群で変異が多く見られる。側弯症(PTC変異),水晶体亜脱臼(システイン関連変異)などの表現型と遺伝子型の関係に関する報告もあるが,僧帽弁疾患との関係に関する報告は少なく,手術介入を含めた僧帽弁疾患との関連を調べた先行研究はない。【方法】当院マルファン外来受診歴のある患者のうちFBN1遺伝子の変異が確認された458例を対象とし,変異情報に基づいてPTC群(151例), inframe変異群(307例)に分類した。僧帽弁疾患(僧帽弁置換術・形成術の既往や中等度以上の僧帽弁逆流症)の有無とFBN1遺伝子型との関連をカプランマイヤー法を用いて解析した。【結果】男性が228例(49.8%)であった。inframe変異群のうち新生児領域での変異は52例(16.9%)であった。観察期間中央値33.4年の期間に僧帽弁疾患を認めたのは56例(12.2%)で,僧帽弁置換術・形成術を要したのは41例(9.0%)であった。僧帽弁疾患発症は性別(p=0.129),システイン関連変異の有無(p=0.844),PTC/inframe変異群間で有意差を認めなかった(p=0.591)。PTC,inframe変異(新生児領域),inframe変異(非新生児領域)の三群で分類すると,30歳時点での僧帽弁疾患無イベント率はそれぞれ94.1,74.4,91.8%で新生児領域のinframe変異で発症リスクが有意に高かった(p<0.001)。【結論】マルファン症候群において僧帽弁疾患は新生児領域でのinframe変異で発症率が高く,他の表現型と異なる遺伝学的発症リスクを認めた。