講演情報
[I-OR11-02]当院における総肺静脈還流異常症40例の胎児エコーにおける重症度と生後の重症度の比較
○井上 史也, 池川 健, 加藤 昭生, 若宮 卓也, 小野 晋, 柳 貞光, 上田 秀明 (神奈川県立こども医療センター 循環器内科)
キーワード:
胎児心エコー、総肺静脈還流異常症、肺静脈狭窄
【背景】総肺静脈還流異常症(TAPVR)は胎児診断の難しさに加え,重症度により慎重な分娩計画を練る必要がある疾患である.そこで,胎児エコーで用いられる重症度の指標と,生後の重症度をPulmonary vein stenosis score(PVS score)を用いた分類と比較し考察する.【目的】胎児エコーでの重症度評価の正当性を検討する.【方法】当院で2017年から2024年までに胎児診断した40例において検討した.胎児エコーにおける重症度評価は二峰性を正常またはmild,一峰性をmoderate,平坦な波形をsevereとした. 生後のエコーにおいてはPVS scoreを参考に,狭窄部位の平均圧格差が<2mmHgをnone, 2-4 mmHgをmild, 5-6mmHgをmoderate, 7mmHg以上をsevere,および閉鎖症例をocclusionとした.【結果】右側相同に合併した症例が23例(A群),孤発例が17例(I群)であった.胎児エコーでmild以下が13例(A:7 I:6),moderateが13例(A:7 I:6),severeが14例(A:9 I:5)であった.生後の評価でnoneが2例(A:2),mildが10例(A:8 I:2),moderateが9例(A:7 I:2),severeが15例(A:8 I:7),occlusionが4例(A:3 I:1)であった.胎児診断と生後の肺静脈狭窄の重症度の一致率は75%(A:78% I:71%)であった.胎児診断の一致率は,mild以下では12/13(92%), moderateでは7/14(50%),severeでは14/14(100%)であった.【考察】波形がflatな症例は,流速にかかわらず重症であり,また,occlusion症例全てにおいて肺静脈平均流速が<7.5cm/sと低速であった.Moderateにおいてはmildないしsevereが半数混ざっており,一致率が低かった. 【結語】TAPVR症例の胎児エコーにおいて平坦な波形は重症の肺静脈狭窄を示唆する所見であり,低流速である場合にはocclusionの可能性も考慮する必要がある.一峰性の波形においては,軽症ないしは重症となる可能性があり注意が必要である.