講演情報

[I-OR11-03]九州地区における重症先天性心疾患の胎児診断率

永田 弾1, 西畠 信2, 前野 泰樹3, 漢 伸彦1, 川村 順平4, 寺町 陽三5, 杉谷 雄一郎6, 原田 雅子7, 土井 大人7,8, 原 卓也9, 岡田 清吾10 (1.福岡市立こども病院, 2.鹿児島生協病院, 3.聖マリア病院, 4.鹿児島大学病院, 5.久留米大学病院, 6.JCHO九州病院, 7.宮崎大学病院, 8.佐賀大学病院, 9.大分県立病院, 10.山口大学病院)
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キーワード:

胎児診断、九州山口胎児心臓研究会、重症先天性心疾患

【背景】先天性心疾患(CHD)における胎児診断は、その技術や知識、エコー機器の進歩に伴い明らかに向上してきた。しかしながら、胎児診断率に関する本邦の報告は極めて少なく、その現状は明らかではない。今回の研究の目的は、九州地区における重症先天性心疾患の胎児診断率について調査し、胎児診断が予後に及ぼす影響について検討することである。【対象と方法】対象は2018年1月1日から2020年12月31日に胎児診断もしくは新生児診断された重症先天性心疾患症例で、追跡期間は2021年12月31日までとした。後方視的な多施設共同研究であり、各施設のデータベースから対象症例を抽出し、その診療録から臨床情報を収集した。【結果】研究期間中に538例が重症CHDと診断され、そのうち343例 (64%)が胎児診断例であった。各地域の胎児診断率を比較すると、最も高い県で75%、最も低い県では41%であった。また、疾患別での胎児診断率は、Heterotaxyで最も高く56例 (87%)、TAPVCが最も低く7例 (17%)であった。胎児診断は妊娠 28 (14-39)週で行われ、四腔断面での診断は211 (68%)で流出路からthree vessel viewでは101例(32%)であった。胎児診断例と出生後診断例を比較すると、母体年齢や多胎の頻度、分娩様式に有意な差はなく、心外合併症 {胎児診断97例 (28%) vs 出生後診断 16例 (8%), p<0.0001}、染色体・遺伝子異常の合併 {90例 (27%) vs 31例 (16%), p=0.0043}、出生体重 {2660 (491-4120) vs 2860 (708-4080), p<0.0001}で有意差がみられた。1歳までの予後を比較すると、死亡は52例 (16%) vs 15例 (8%), p=0.0051と胎児診断群で予後が悪い結果であった。【まとめ】九州地区全体の胎児診断率は約6割であったが、地域での差がみられた。胎児診断例のほうが予後不良であり、重症な疾患ほど胎児診断されやすい可能性が示唆された。