講演情報

[I-OR11-04]胎児心臓MRIの最先端:疑似心拍数を設定し撮像する胎児心臓シネMRI

稲毛 章郎1,3,4, 水野 直和2, 吉敷 香菜子3, シード マイク5, 嘉川 忠博3 (1.日本赤十字社医療センター 小児科, 2.榊原記念病院 放射線科, 3.榊原記念病院 小児循環器内科, 4.東京女子医科大学附属病院 足立医療センター 放射線科, 5.トロント大学 トロント小児病院 小児循環器科)
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キーワード:

胎児心臓MRI、疑似心拍数、シネMRI

背景:胎児心臓MRIは、欧米では約20年以上前から臨床的に撮像が開始されている。特に胎児心エコーが困難になる妊娠後期では、羊水量の減少や胎児の体動低下によりMRIの画質が向上する。ただし、従来の心臓MRIと同様の方法で胎児心血管のデータを取得した場合、胎児心が小さく心拍数が高いこと、胎児心拍をモニタリングできないため通常の心電同期撮像が難しいこと、母体の呼吸と予測できない胎児の動きなど多くの制限が生じてしまう。
目的:胎児の疑似心拍数を設定した胎児心臓MRIにて、診断的価値のあるシネ画像を撮像すること。
症例:榊原記念病院にて妊娠後期の胎児に対して、母親へMRIの胎児への安全性について説明しインフォームドコンセントを得た後に、胎児疑似心拍数を150bpmと設定して胎児心臓MRIシネ画像を撮像した。左室と右室それぞれの二腔像、四腔像および左室短軸像を鮮明に撮像することができ、心房位、心室位、心房心室関係、心室大血管関係、体静脈および肺静脈の接続、大血管の構築、大動脈弓の側性、さらには心室および血管のサイズを特定することが可能であった。
考察:近年欧米では胎児心臓MRIは技術的進歩を重ね、胎児心電図取得技術が確立され、加速イメージング技術、および動き補正アルゴリズムの改良などの技術革新により、高解像度動的イメージングが可能となっているが、撮像後に複雑な後処理が必要であり、手動での解析作業も伴うため、多大な時間と費用が必要となっている。今回胎児の疑似心拍数を設定することにより、胎児の心臓MRIにて診断的価値のあるシネ画像を容易に撮像することが可能であった。
結語:胎児心臓MRIは、胎児心エコーの診断的有用性が制限される妊娠後期において、補完的な役割を果たす可能性があり、本邦でも今後重要な診断ツールとして期待される。本発表にて、4D-flow MRIを含めた胎児心臓MRIの最先端技術を用いた胎児循環血行動態評価法についても論じる。