講演情報

[I-OR12-01]小児慢性心不全患者へのイバブラジンの使用経験-4症例のまとめ

矢内 俊, 山岡 大志郎, 齊藤 真理子, 堀川 優衣, 堀尾 直裕, 清水 武, 喜瀬 宏亮, 藤井 隆成, 宮原 義典, 富田 英 (昭和大学病院 小児循環器・成人先天性心疾患センター)
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キーワード:

イバブラジン、心不全、頻脈

【背景】イバブラジン(IVA)は洞結節細胞の過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル4を阻害し、過分極活性化内向き電流を抑制し心拍数低下をもたらす心不全治療薬である。小児における有効性の報告は少ない。【対象と方法】2022年に昭和大学病院IRBの承認を得て、小児慢性心不全患者に4例に対してIVA投与を行った。投与量は2017年のBonnetらの論文を参考に0.02mg/kg/doseまたは0.05mg/kg/dose、1日2回として2週毎に倍増、0.3mg/kg/doseを上限とした。IVA開始後の、心拍数の変化(20%以上の低下を有意と判定)、循環作動薬離脱可否による心不全の推移、および有害事象の有無を後方視的に検討した。【結果】症例1: 1歳11か月男児(部分トリソミー13, DCM, DORV)は心内修復後に頻拍性(安静時: 140)心機能障害が遷延した。IVA導入後、心拍数が低下し左心機能も改善、アドレナリン持続静注は中止した。症例2: 0歳2か月女児(HLHS, 両側PAB術後)もIVA導入後にアドレナリン持続静注を離脱したが、0.15mg/kg/dose時に啼泣時の洞性徐脈を認めIVAは中止した。現在はBTシャント術後の状態で外来管理中である。症例3: 0歳9か月女児(ccTGA, Severe TR)はPAB術後に退院したが、うっ血性心不全にて再入院した。IVA導入後も頻拍(安静時: 100)や心不全が改善しなかった。MRIにて左室心筋重量を評価したうえでダブルスイッチ術を行った。術後経過は良好である。症例4: 7歳男児(DORV)は心内修復後も肺動脈弁逆流による内科治療抵抗性の慢性両心不全、蛋白漏出性胃腸症を認めた。IVA導入後に頻脈(安静時: 80)、心不全は軽減し退院した。3か月後の肺動脈弁置換術実施後にIVAは再開せず、外来管理中である。【考察】今回の検討では、弁逆流に起因する容量負荷例には効果がみられなかったが、HFrEF症例には一定の効果がみられた。事前に設定した用量内でも有害事象が生じたことから、注意深い使用が必要である。