講演情報

[I-OR13-02]体肺動脈側副血行路に対するコイル塞栓術後の発熱に関する検討

小島 拓朗, 小林 俊樹, 杉山 幸輝, 高尾 浩之, 湯浅 絵理佳, 長岡 孝太, 戸田 紘一, 鍋嶋 泰典 (埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)
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キーワード:

コイル塞栓、発熱、ハイドロゲルコイル

【背景】体肺動脈側副血行路 (APC)に対するコイル塞栓術後に、しばしば患者の発熱を経験する。しかし、その要因は明らかではない。【目的】APCに対するコイル塞栓術後の発熱の要因を明らかにする。【方法】当院にてAPCコイル塞栓術を行った97例を対象に、使用したコイルの種類により以下の3群に分けた。プラチナコイルのみで閉鎖した群 (P群; 52例)、プラチナコイルとハイドロゲルコイルで閉鎖した群 (PH群; 29例)、ハイドロゲルコイルのみで閉鎖した群 (H群; 16例)。【結果】対象となった97例 (使用コイル数1412)のうち、APCコイル塞栓術後に発熱 (≧38.0℃)を認めた割合は、全体で62例 (64%)であった。各群別にみると、P群: 73.0%、PH群: 68.9%、H群: 25.0%と、H群において有意に発熱の割合が低かった (p<0.001)。一方で、1セッションあたりで使用したコイル数と発熱の有無との間には、関連は認めなかった。また、発熱した症例の中において、H群ではP群やPH群と比較し解熱までの日数が短い傾向があった。発熱した症例では、コイル塞栓術前後で血液検査上CRP優位の炎症反応上昇を認めた(WBC: 8999±455.9 vs 10321±603.7, p=0.084, CRP: 0.52±0.17 vs 4.21±0.48, p<0.0001)。【考察】プラチナコイルは、コイルそのものの塞栓力と血栓形成により塞栓力を高める。そのため、コイルに対する生体の異物反応のみならず、血栓形成の過程においても炎症反応を惹起しやすい。一方、ハイドロゲルコイルは、ハイドロゲルの親水性により異物反応が起こりにくい事や血管塞栓における血栓依存性が低い事から、炎症反応が起こりにくいと思われる。【結語】ハイドロゲルコイルは、プラチナコイルよりも塞栓術後の炎症と発熱を起こしにくい。