講演情報

[I-OR13-03]小児における薬剤溶出性ステント留置後の血中濃度と有害事象の検討

前島 直彦, 石垣 瑞彦, 森 秀洋, 渋谷 茜, 金 成海, 眞田 和哉, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 満下 紀恵, 新居 正基, 田中 靖彦 (静岡県立こども病院 循環器科)
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キーワード:

薬剤溶出性ステント、エベロリムス、低出生体重児

【背景】国内で小児に適応のあるステントはなく, 冠動脈用ステントが使用されてきたが, 近年ベアメタルステントの製造中止に伴い薬剤溶出性ステント(DES)が選択されている. 一方, 新生児・乳児におけるDES塗布薬剤の血中動態や有害事象に関するデータは不足している.【目的】DES留置後のエベロリムス血中濃度の推移を評価し, 薬剤塗布量との関係および有害事象の発生状況を検討する.【対象と方法】2023~2024年に当院でDESを留置し, 術後エベロリムス血中濃度を測定した8例を対象. 背景因子(年齢・疾患・体重・体表面積), ステント種類・留置部位・薬剤塗布量・血中濃度・有害事象を後方視的に検討した. 対象を留置時体重2.5kg以下(A群: 4例), 2.5kg超(B群: 4例)に分類し, 血中濃度と有害事象の有無を比較した.【結果】対象: 日齢中央値27日, ステント溶出薬剤はいずれもエベロリムス, 留置部位は動脈管4例, 大動脈縮窄部2例, 右室流出路2例だった. 術後2-3日目の血中濃度は, 至適(3-8ng/mL):A群2例, B群1例, 至適未満:A群0例, B群3例, 至適超過:A群2例(1例はステント2本留置)だった. 2週間後には全例が至適未満となった. 至適超過した2例の内, 1例は薬剤塗布量が最大例, もう1例は有害事象(汎血球減少および感染)を認めた.【考察】DESに含有されるエベロリムスは免疫抑制剤として用いられる量と比し少量かつ数ヶ月で徐放される. 成人体格では微量であるが, 新生児・低体重児では血中濃度が上昇する可能性があり, 特に低体重児では至適濃度を超えるリスクがあるため慎重な選択が求められる. 同じDESでもステント種類により薬剤塗布量は異なり, その点を考慮したステント選択が必要である. 今回の肺炎との直接的因果関係の証明は困難であるが, 血中濃度と有害事象の関連について更なる症例の集積が必要である.