講演情報
[I-OR13-04]腎動脈狭窄症に対してステント留置術をおこない血圧管理が可能となったmid aortic syndromeの1症例
○高村 一成, 兒玉 祥彦, 高橋 雅子 (宮崎大学医学部発達泌尿生殖医学講座小児科学分野)
キーワード:
mid aortic syndrome、腎動脈狭窄、ステント留置術
【背景】mid aortic syndromeは小児期に発症する稀な疾患で高血圧や腎機能障害を合併し、外科的治療を必要とすることがある。しかし、体格から外科的治療介入が困難な例も存在し、治療方針に苦慮する疾患である。【経過】在胎36週2日、3000gで出生、呼吸障害のため新生児管理を要した。その際に高血圧、左室機能不全を認め、レニン・アルドステロン高値と腹部造影CTでの左腎動脈描出不良の所見から、腎血管性高血圧、高血圧性心不全と診断された。ACE阻害薬の内服で血圧は安定し心機能は改善した。2ヶ月の時点で低血圧を理由にACE阻害薬の内服は中止された。生後8ヶ月時に呼吸状態の増悪のため当院に入院。腎機能低下と著明な高血圧を伴う左室肥大と高度左室機能不全を呈していた。腹部造影CTで右腎動脈と腎動脈下腹部大動脈の高度狭窄および左腎動脈の閉塞を認め腹部大動脈縮窄症(mid aortic syndrome)を背景とした腎血管性高血圧に伴う心不全と診断した。降圧すると容易に尿量が低下し管理に難渋した。挿管人工呼吸管理、強心剤、持続血液濾過透析による体液管理での心不全治療を継続し、右腎動脈狭窄に対してバルーン拡張術を施行。一時的な降圧に伴い左室駆出率は改善し退院可能となったが、約1ヶ月程度での右腎動脈の再狭窄と腎不全および心不全の再増悪のため、バルーン拡張術を繰り返した。バルーン拡張術のみでは治療効果が維持できなかったが、外科的腎動脈再建術は閉塞リスクが高いと判断し、1歳2ヶ月の時点で右腎動脈狭窄に対してステント留置術を行った(Xience skypoint 3.5×18mm)。腎不全、高血圧、左室機能不全は改善し、1歳8ヶ月現在も入院なく外来管理を継続できている。【考察】乳児期のmid-aortic syndromeによる腎不全では、高血圧による左室機能不全を呈することがある。薬剤やバルーン拡張術で管理困難な症例では、腎動脈ステント留置術は有用な治療選択肢になり得る。