講演情報

[I-OR14-04]単一部位ペーシングによる心臓再同期療法で心機能が改善した心室間非同調を有する単心室症の3症例

橘高 康文1, 小野 晋1, 柳 貞光1, 橘 剛2, 河合 駿3, 加藤 昭生1, 池川 健1, 若宮 卓也1, 上田 秀明1 (1.神奈川県立こども医療センター 循環器内科, 2.神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科, 3.横浜市立大学附属病院 小児循環器科)
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キーワード:

単心室症、心室間非同期、心臓再同期療法

【背景】自己伝導とペーシングを融合させて行う心臓再同期療法(CRT)は成人二心室症例で良好な成績が報告されている。一方で単心室症の患者に対するエビデンスはない。今回、従来型ペースメーカを用いた自己伝導とペーシングによるCRTが奏功した単心室症の3症例を報告する。
【症例】症例1は三尖弁閉鎖症(2c)、大動脈縮窄、大動脈修復術後、DKS吻合・両側Glenn手術後の1歳女児、症例2、3は右側相同、痕跡的左室を伴う右室型単心室、総肺静脈環流異常症、Fontan手術後の8歳男児と4歳男児である。いずれも心室間非同期による心不全のため、強心薬からの離脱が困難であった。事前にカテーテル室で遅延部位に電極カテーテルを留置し自己伝導と融合させCRTの効果を評価した後にペースメーカ植え込みを行った。心室ペーシング部位は症例1は左室後壁、症例2は右室後下壁、症例3は右室前壁とした。ペースメーカ植え込み後、全症例で心室間遅延は消失し主心室のGLS (%)は-13.8から-16.9, -3.5から-11.8, -10.8から-16.2に改善、NT-proBNP(pg/mL)は23720から2899, 3777から27.7, 1732から564へ低下、QRS幅(ms)は130から109, 172から126, 164から102へ短縮した。また大きな心拍変動に対し、症例2ではβブロッカーやジゴキシンの内服を継続し、症例3ではイバブラジンを導入した。心電図波形(QRS波の幅/形など)や心エコー所見(心室間遅延やAVVTIなど)、血圧などを参考にAV delayを設定した。3症例とも98~100%のペーシング率を維持できており、現在も心不全症状の再燃なく外来で経過観察がされている。
【考察】心室間非同期を有する単心室症において、自己伝導とペーシングの融合によるCRTが治療選択となり得る。従来型ペースメーカの植え込みは少ないリード数やデバイスの大きさなどからも侵襲が少なく、将来複数回の再リード植え込みが予想される小児において心臓絞扼のリスク低下や植え込み可能部位の温存が期待できる。