講演情報
[I-OR15-04]学校内で自動体外式除細動器を用いて心肺蘇生を受けた症例の特徴
○加藤 愛章, 伊藤 裕貴, 坂口 平馬, 松原 一樹, 高山 達, 村山 友梨, 戸田 孝子, 藤本 一途, 岩朝 徹, 津田 悦子, 黒嵜 健一 (国立循環器病研究センター 小児循環器科)
キーワード:
自動体外式除細動器、学校心臓検診、心肺蘇生
【背景】日本では自動体外式除細動器(AED)がほぼ全ての学校に設置されているが、以前から必要時にAEDが使用されていないという問題が指摘されていた。突然に倒れた子どもに対し、より積極的にAED装着することが提唱されるようになった。【目的】学校内での子どもの心停止に対するAEDの使用実態を明らかにする。【方法】2017年1月~2025年1月に学校内で心肺蘇生を受けAEDを装着された12例の小児患者を対象とし、その臨床像を検討した。【結果】対象の年齢は中央値12歳(8~16歳)、男9例(75 %)。6例(50%)で事前に心疾患を指摘されており、8例(67%)で初回の心イベントが学校での心停止であった。12例全てが運動関連で発症し、安静時に発症したものはなかった。全例で教員による心肺蘇生を受け、AEDを装着された。2例はAED装着時には意識回復していたが、10例(83%)でショック作動し、その後に自己心拍再開した。心疾患の内訳は、肥大型心筋症が7例、カテコラミン誘発多形性心室頻拍が2例、先天性QT延長症候群が2例、特発性心室細動が1例であった。追跡期間は中央値21.5か月(0~94か月)において全例で運動が制限され、薬物治療を継続され、10例(83%)で植え込み型除細動器を導入された。全例が生存し、現時点では明らかな神経学的後遺症はみられていない。【考察】学校においてAEDが適切に使用されることが増えていると推測された。学校心臓検診で事前に心疾患を診断できても、特に無症状の児では内服継続や運動制限を順守することができずに心停止を来す症例がおり、小児特有の患者教育の難しさが問題となった。【結論】心停止後早期にAEDを用いて心肺蘇生が開始された児では救命率は高く、神経学的予後も良好であった。学校現場において、子どもでも予期しえない心停止が起こることを前提とし、積極的にAEDを用いる心肺蘇生法のさらなる普及が期待される。