講演情報
[I-OR16-05]左心室の心室内血流比率は、左心機能低下の早期指標になりうるか?
○柴垣 有希, 岡 秀治, 今西 梨菜, 中右 弘一 (旭川医科大学 小児科)
キーワード:
4D flow MRI、心室内血流、心機能評価
【背景】4D flow MRIでの心室内血流解析によって心室内血流の視覚化と定量評価が可能になった。左心室の心室内血流は四成分(Direct flow: DiF, Delayed ejection flow: DeF, Retained inflow: ReI, Residual volume: ReV)に分類される。DiFは同じ心周期の間に左心室に入って出ていく血液で、DeFは元々左心室内にあり、収縮期に左心室から出ていく血液である。健常者ではDiFの割合が最も多く、駆出血流であるDiF+DeFはLVEFを示すと言われるが、心疾患患者での心室内血流の割合やその有用性は明らかではない。【目的】4D flow MRIの心室内血流解析で左心室の血流動態を評価すること【方法】2022-2024年に当院で心臓MRIを撮像した心疾患患者23名と健常者7名を対象にした。4D flow MRIで左心室内血流を解析し、各血流成分、心機能、心内圧を比較検討した。【結果・考察】年齢中央値は、健常者vs疾患群: 23(13-26)歳 vs 21(15-37)歳であり、体格に差はなかった。健常者の左心室内血流は、平均DiF 45.3%, DeF 14.9%, ReI 20.4%, ReV 19.4%、疾患群では、平均DiF 37.1%, DeF 16.9%, ReI 23.0%, ReV 23.1%であり、疾患群でDiFが有意に低かった(p=0.012)。両群ともDiF+DeFとLVEFは良好な正の相関関係を示した(R=0.69, p<0.001)。疾患群で心室内血流成分と心内圧を比較したところ、DiFが減少すると左室拡張末期圧(LVEDP)が上昇する傾向にあった(R=-0.45, p=0.032)。DiF+DeFとLVEDPは相関しなかった。心疾患患者では、LVEFが正常値であっても、血流成分としてはDiFが減少し、LVEDPと関連している可能性があることが分かった。心室内血流成分のDiFの変化は、LVEFが低下する前の早期指標になる可能性がある。【結論】左心室内血流解析によって左心室の血流動態を評価することができ、左心室内血流の割合の変化は、心機能が低下する前の早期の兆候を捉えられる可能性がある。