講演情報
[I-P01-1-04]学校心臓検診でQT延長を指摘された児に対するホルター心電図の有用性について
○大鹿 美咲, 中村 蓉子, 高井 詩織, 渡邉 友博, 渡部 誠一 (土浦協同病院)
キーワード:
学校心臓検診、QT延長症候群、ホルター心電図
【背景】QT延長症候群(以下LQTS)は失神や突然死をきたす疾患で、学校心臓検診で多く抽出される。LQTSの診断・診療において、ホルター心電図のデータに関する明確な基準はまだ存在しない。【目的】学校心臓検診でQT延長を指摘された児に対し、初回精査時のホルター心電図の有用性を明らかにする。【方法】2015年1月から2025年1月までに、学校心臓検診の一次または二次検診でQT延長を指摘されて当院を紹介受診した症例について、後方視的に検討した。【結果】診療録を確認できた31例が対象となった。受診時点で失神などの症状の既往があったのは4例(12.9%)であり、LQTSや突然死の家族歴を有していたのは3例(9.7%)であった。全例で、初回精査時に安静時心電図、ホルター心電図、運動負荷心電図を実施した。そのうちエピネフリン負荷試験・顔面浸水負荷試験を実施したのが12例、遺伝子検査を実施したのが10例だった。遺伝子変異を認めたのは全部で8例(25.8%)あり、KCNQ1の変異が3例、KCNH2、KCNE1、KCNJ2がそれぞれ1例ずつで、その他2例は現時点で病的意義の不明なバリアントであった。遺伝子変異陽性となった児について、初回のホルター心電図のmaxQTc 550msec以上という基準を用いると感度67%、特異度75%であった。Fisherの正確確率検定を実施したが、有意差はつかなかった(p=0.52)。経過観察中に失神や心停止などのイベントを認めた症例はなかった。【結論】学校心臓検診でQT延長を指摘された児に対して実施する初回のホルター心電図に関して、特異度が高いことから、maxQTc 550msec未満であるとLQTSではない可能性が高いことがうかがえた。基準値の決定には今後の症例の蓄積が求められる。一方で、早期に発見し治療介入や経過観察を行うことで、この10年で一度も心イベントの発生がなく管理できており、学校心臓検診の有用性を再認識できた。