講演情報

[I-P01-1-07]当院で経験した脚気心の3症例

渡邊 望, 田中 敏克, 伊藤 啓太, 稲瀬 広樹, 飯田 智恵, 中井 亮佑, 久保 慎吾, 三木 康暢, 亀井 直哉, 小川 禎治, 城戸 佐知子 (兵庫県立こども病院 循環器内科)
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キーワード:

脚気心、ビタミンB1、肺高血圧

【背景】脚気心は高心拍出性心不全を呈するとされ、まれに肺高血圧症を呈する症例の報告がある。今回、近年経験した脚気心の3症例に関して報告する。【症例1】21trisomyの背景がある3歳女児。上気道炎として経過観察中に活気不良が出現し近医を受診した。前医を紹介受診し、心臓超音波検査で肺高血圧症が疑われ当院へ転院搬送された。発達特性や家庭環境から脚気心の可能性を考えてビタミンB1の投与をおこなった。翌日から肺高血圧所見は軽快し、入院22日目に自宅退院した。【症例2】特記既往のない3歳男児。原因不明の経口摂取不良で前医入院時に浮腫の出現があった。心臓超音波検査で肺高血圧症が疑われ当院へ転院搬送となった。食歴から脚気心の可能性を考えてビタミンB1の投与を開始した。翌日から肺高血圧所見は軽快し、入院24日目に自宅退院した。【症例3】特記既往のない1歳男児。経口摂取不良と活気不良があり、近医を受診した。前医受診時はショック状態で当院へ転院搬送となった。心臓超音波検査で右室拡大やD-shapeを認めた。診断的治療目的にビタミンB1を投与した直後から血圧上昇や肺高血圧所見の改善を認めた。以降、肺高血圧所見は軽快し、入院16日目に退院した。今回経験した3症例とも高度の肺高血圧を呈していた。症状軽快の後に血清ビタミンB1の低値が判明し脚気心と診断した。発達特性や職歴などの患者背景を考慮し、早い段階で脚気心を疑い、診断的治療目的にビタミンB1を投与することで速やかに症状の軽快を得られた。ビタミンB1は水溶性ビタミンで有害事象が少ないことや、血清値の結果確認までに時間を要することを考慮すると、原因不明の肺高血圧では診断的治療目的に投与することが重要であると考える。小児循環器医のみならず、救急医や集中治療医にも肺高血圧の原因疾患として本疾患を念頭に置くことを啓蒙すべきと考える。また、再発予防のために栄養士や地域との連携が重要である。