講演情報
[I-P01-1-08]左室内巨大心横紋筋腫にエベロリムスが著効した乳児例
○國松 将也, 奥主 健太郎, 濱田 洋通 (千葉大学医学部付属病院 小児科)
キーワード:
結節性硬化症、心横紋筋腫、エベロリムス
【背景】心横紋筋腫は結節性硬化症(Tuberous sclerosis complex: TSC)の過半数に生じる良性腫瘍である。心横紋筋腫は自然消退が期待でき、経過観察する症例が多い。一方、TSC児に合併しうるWest症候群の治療薬ACTHは、心横紋筋腫を増大させる可能性がある。今回、左室内巨大心横紋筋腫を有するTSC児のWest症候群合併例を経験した。エベロリムス(EVL)を投与して左室流出路狭窄を回避し、安全にACTH療法を完遂しえたため報告する。【症例】4か月女児。胎児期から心内腫瘍を指摘され、TSCの診断のため当科外来通院中であった。3か月ころからてんかんに対しバルプロ酸投与を開始していたが、4か月時に特徴的な点頭発作ありWest症候群と診断し入院とした。入院でACTH療法を開始したが、それとともに左室内心横紋筋腫は長径24mmから最大27mmに増大し、収縮期における筋腫と流出路までの距離が最小4mmになったため、流出路狭窄のリスクが高いと判断した。ACTH療法を中断し、EVL投与を開始した。EVL投与で左室内心横紋筋腫は長径20mm弱と縮小傾向となったため、1週間後からACTH療法を再開した。ACTH療法再開後も心横紋筋腫の再増大は来さず、のべ2週間のACTH療法を完遂することができた。【考察】ACTH療法は心筋細胞の肥大や心筋細胞数の増加をもたらす可能性が示唆されている。本症例でも心横紋筋腫の増大が見られ、ACTH療法の中断を余儀なくされた。EVLはもともとTSC児におけるてんかんの治療薬として適応承認されたが、2019年に提唱されたエキスパートオピニオンによれば心横紋筋腫エマージェンシーにも保険診療の範囲で投与が考慮されると記載された。本症例はEVLをACTH療法に併用することで、安全に治療を完遂することができた。【結語】EVLはACTH療法により増大した横紋筋腫に対して縮小効果を示した。