講演情報

[I-P01-1-09]心雑音を契機に発見した肺動脈弁発生の心臓腫瘍の一例

井上 瞭1, 佐藤 正規1, 白水 優光1, 村岡 衛1, 鈴木 彩代1, 連 翔太1, 田尾 克生1, 永田 弾1, 倉岡 彩子1, 中野 俊秀2, 佐川 浩一1 (1.福岡市立こども病院 循環器科, 2.福岡市立こども病院 心臓血管外科)
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キーワード:

心臓腫瘍、心雑音、心臓超音波検査

【背景】小児心臓腫瘍の本邦における年間発生率は40~60例と極めて稀であり、心臓超音波検査による発見率は0.1~0.2%とされる。病型別には、横紋筋腫が60%、線維腫が10%以上、粘液腫が10%未満と報告されている。今回、我々は心雑音を契機に心臓超音波検査で発見された小児心臓腫瘍の1例を経験したため報告する。【症例】患児は1歳3か月の男児。近医受診時に心雑音を指摘され、当院を紹介受診した。身体所見では発熱はなく、胸骨左縁第4肋間にLevine III/IVの収縮期駆出性雑音を認めた。心臓超音波検査では、肺動脈弁の背側に直径12mmの有茎性腫瘤を認め、右室流出路狭窄(右室収縮圧60 mmHg)を呈していた。血液検査では、WBC 9410 /μL、CRP 0.11 mg/dL、D-dimer 0.6 μg/dLと上昇を認めず、疣贅や血栓は否定的であった。 また、AFP 3.4 ng/mL(基準値10.0以下)、CEA 1.3 ng/mL(同5.0以下)と腫瘍マーカーの上昇も認めなかった。造影CTでは、肺動脈弁直下に辺縁分葉状・内部均一で造影効果のない14mmの腫瘤を認め、乳頭状弾性線維腫が疑われた。手術所見では、肺動脈弁背側および心室中隔に付着する白色の有茎性腫瘤を認め無事に切除することができた。組織学的所見および経過について報告する。【考察】小児の心臓腫瘍は稀ではあるが、塞栓症や弁機能障害を引き起こすリスクがあり、無症候性であっても早期の外科手術が適応となる。本症例は、心雑音を契機に心臓超音波検査を実施し、早期診断・摘出に至った。心雑音の鑑別診断として心臓腫瘍を念頭に置くことが重要と考えられた。また、乳頭状弾性線維腫の発生頻度は約8%と少なく、多くは左心系に発生する。本症例のように右心系に発生する例は稀であり、貴重な報告例となる。【結論】心臓腫瘍は塞栓症のリスクがあるため、早期発見および外科手術が必要な疾患である。心雑音の鑑別診断の一つとして、心臓腫瘍の可能性を考慮することが重要である。