講演情報
[I-P01-2-06]診断時に冠動脈拡大を呈する川崎病症例の臨床的特徴
○古田 貴士, 元永 貴大, 岡田 清吾, 長谷川 俊史 (山口大学大学院 医学系研究科医学専攻 小児科学講座)
キーワード:
川崎病、冠動脈病変、心臓血管後遺症
【背景】川崎病(KD)診断時における冠動脈拡大が冠動脈後遺症のリスク因子として近年注目されているが、本集団の臨床像に関する知見は少ない。【方法】2018-2022年に当科で入院加療したKD症例を対象とした。診療録を用いて患者背景、バイタルサイン、理学所見、血液検査所見、画像所見、および治療転帰を後視的に解析した。KD診断時に冠動脈内径のZ スコア2.0以上のKD患者を高スコア群、Z スコア2.0未満の患者を低スコア群と定義した。また、発症1か月以降にZスコア≧2.5が残存した場合を冠動脈病変(CAL)と定義した。高血圧の診断には、American Academy of Pediatricsのガイドラインを用いた。【結果】対象111名中、高スコア群30名(27%)であった。高スコア群は年齢が低く(中央値18か月 vs. 20か月; p=0.007)、高血圧症例が多く(21名[70.0%]vs. 35名[43.2%]; p=0.018)、CAL発症例が多かった(5名[16.7%] vs. 0名[0%]; p=0.001)。また、血液検査ではBNP高値(中央値47.1 pg/mL vs. 23.8 pg/mL; p=0.028)、IgG低値(中央値621.6 mg/dL vs 709.1 mg/dL; p=0.033)、可溶性IL-2レセプター高値(中央値2,616 U/mL vs. 1,938 U/mL; p=0.002)であった。【考察】既報と同様に、診断時に冠動脈が拡大している症例はCALの割合が高かった。診断時に冠動脈が拡大している症例における可溶性IL-2レセプターおよびBNP高値は、それぞれ免疫担当細胞の活性化および汎心臓炎の程度が強いことを反映していると推察した。本集団におけるCAL予防に向けて、初期治療強化および積極的な血圧管理の是非についてさらなる検討が必要である。