講演情報
[I-P01-2-08]川崎病後冠動脈狭窄・閉塞に対する冠動脈バイパス手術の治療成績
○中西 啓介, 天野 篤, 田端 実 (順天堂大学医学部附属順天堂医院 心臓血管外科)
キーワード:
川崎病、冠動脈バイパス手術、冠動脈瘤
【背景・目的】 川崎病後冠動脈病変に対する治療成績は近年の医療技術発展、治療経験の集積によって安定した成績を示すようになってきた。しかしながら、治療方針においてはまだ不明な部分も多く存在している。当院で行われた川崎病後冠動脈瘤に起因する冠動脈病変に対する治療経験をまとめたので文献的考察を加えて発表する。【方法】 手術適応は、左冠動脈主幹部病変を有する、左前下行枝の完全閉塞病変が存在する、左冠動脈病変を含む多枝病変を呈している、とした。手術は、動脈グラフトを用いた完全血行再建が行われた。使用した動脈グラフトは、右内胸動脈、橈骨動脈、右胃大網動脈を用いた。冠動脈瘤に関しては、将来的に腫瘤として周囲組織を圧迫する可能性がある場合、25-30mm以上で瘤破裂の危険がある場合などに合併切除を行った。【結果】 2007年から2024年までで当院で経験した川崎病後冠動脈病変に対して手術加療を行った症例は全部で15例であった。手術年齢は、7-64歳(中央値38歳)、フォローアップ期間は、9±4.5年、冠動脈病変はほぼすべての症例が左冠動脈前下行枝完全閉塞を呈し、他症例も多枝病変を含む高度狭窄所見を有していた。冠動脈瘤手術症例は2例あり、右冠動脈縫縮を行った症例では、術直後に冠攣縮を起こし右冠動脈バイパスを追加した。手術死亡症例は認めず、遠隔期に突然死と不整脈を呈した症例がそれぞれ1例であった。他の症例では、心血管イベントなど起こさずに全例生存しNYHA1度であった。【考察】 文献的に示されるように、術前心機能低下例においては当院の手術例においても不整脈や死亡例を認める結果となった。冠動脈瘤自体を治療する事での治療成績への影響は不明である。術前EFが低下する前の手術加療がさらに良好な手術成績を残せる可能性がある。【結語】 川崎病後冠動脈病変に対する動脈グラフトを用いた完全血行再建は良好な手術成績を残すことが可能であった。