講演情報

[I-P01-2-10]抗凝固療法を要する川崎病性冠動脈瘤症例における妊娠・出産の課題と対策

山口 洋平1, 長原 慧1, 大槻 彩子2, 細川 奨3, 土井 庄三郎4, 石井 卓1 (1.東京科学大学 小児科, 2.太田総合病院 小児科, 3.武蔵野赤十字病院 小児科, 4.東京医療保健大学 立川看護学部 看護学科)
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キーワード:

移行期医療、川崎病性冠動脈瘤、妊娠・出産

【背景】巨大冠動脈瘤を伴う川崎病症例に対して、主にワルファリンを用いた抗凝固療法が実施されることが多い。妊娠適齢期までワルファリン投与を要する場合に問題となるのが催奇形性と出血性合併症である。妊娠を考え始める時点で、患者とパートナーおよび小児科・産科・循環器内科等の横断的な他科連携が必要となる。妊娠期にワルファリンからヘパリン自己皮下注射に切り替えて妊娠・出産に成功した川崎病性巨大冠動脈瘤の2症例を元に、移行期医療における課題と対策について検討する。【症例1】出産時32歳女性。6歳時に川崎病に罹患し左右冠動脈に複数の瘤形成を認めてワルファリンを開始されていた。30歳時に妊娠・出産を希望された。心臓MRIで右冠動脈領域にわずかな心筋虚血所見を認めたが、妊娠は可能であると判断した。ワルファリンを中止して3か月の経過観察で虚血症状・所見がないことを確認した後に妊娠、妊娠20週からヘパリン在宅自己注射療法(5,000単位/回、12時間ごと)を開始した。妊娠37週3日に無痛分娩で合併症なく出産した。【症例2】出産時37歳女性。9歳時に川崎病に罹患し左右冠動脈に最大径8.3mmの冠動脈瘤を認めてワルファリンを開始されていた。経過観察中に各種検査で冠動脈狭窄や心筋虚血の所見を認めていなかった。36歳時に妊娠が判明し、ワルファリンを中止し、妊娠20週からヘパリン在宅自己注射療法を開始した。妊娠38週から入院を計画していたが、予定入院2日前に陣痛発来のため緊急入院し、無痛分娩で合併症なく出産した。【考察】抗凝固療法を要する冠動脈瘤症例の妊娠・出産に際しては、虚血・出血リスク、胎児への影響等を多角的に評価する必要があり、複数科および多職種の連携が重要である。また、時間をかけて中長期的に評価・検討を重ねることが望ましく、患者が10代のうちから移行期医療を始めるべきと考える。