講演情報

[I-P01-3-05]孤立性下大静脈欠損における合併疾患と経過観察の課題

福井 秀吉1, 中村 香絵1, 佐々木 赳1, 藤野 光洋1, 川崎 有希1, 吉田 葉子1, 鈴木 嗣敏1, 村上 洋介1, 杉山 央1, 小澤 秀人2, 鍵崎 康治2 (1.大阪市立総合医療センター 小児循環器不整脈科, 2.大阪市立総合医療センター 小児心臓血管外科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

孤立性下大静脈欠損、多脾症候群、中腸軸捻転

【緒言】胎児心スクリーニングの進歩によって、心疾患を伴わない孤立性の下大静脈欠損(Interrupted inferior vena cava: IIVC)の診断数が増加している。孤立性IIVCの発生頻度は非常に稀とされ、一般的に心疾患を伴うIIVCよりも比較的予後が良いと考えられているが、IIVCは内臓錯位と関連し、心構造異常以外では、不整脈、消化管疾患を合併することがあり、経過観察については定まった知見がない。【目的】孤立性IIVCの経過を明らかにし、経過観察における留意点を提案する。【方法】当院の電子カルテで1999年から2023年の間にIIVCと診断された患者を抽出し、後方視的に検討した。【結果】IIVCは35例おり、男性が12例(34%)、女性が23例(66%)。そのうち孤立性IIVCは9例あり、経過観察期間は中央値10年(0.5-25)、うち4例は胎児診断されていた。孤立性IIVC9例中5例(56%)に先天的腹部疾患を認め、腸回転異常は3例、うち2例は中腸軸捻転を来した。孤立性IIVCを胎児診断された1例は、退院後、日齢15に嘔吐のため救急外来を受診し、腸回転異常および中腸軸捻転の診断で緊急手術となった。一方心疾患を伴うIIVCは26例で、経過観察期間は中央値16.5年(0.04-37)。6例(23%)に先天的腹部疾患を認め、1例が中腸軸捻転であった。洞不全症候群は孤立性IIVCで1例(11%)、心疾患を伴うIIVCで5例(19%)認め、心疾患を伴う5例でペースメーカ留置術を要した。【考察】孤立性IIVC症例においても腹部疾患合併は一定数あり、孤立性IIVCの胎児診断が腹部疾患診断の契機となっていた例を認めた。既報では心疾患を伴わない多脾症候群でペースメーカ留置に至っている症例もあり、定期的な観察が望ましい。【結論】孤立性IIVCの胎児診断は背景にある内臓錯位に関連すると思われる合併疾患の診断契機となり得る。孤立性IIVCでは、中腸軸捻転を含め腹部疾患や、不整脈を合併しうることに留意して経過観察する必要がある。