講演情報

[I-P01-3-06]高度三尖弁閉鎖不全に伴う機能的肺動脈閉鎖の2症例に対する治療経験

高野 峻也, 細矢 薫子, 川島 綾子, 林 真理子, 青柳 良倫, 桃井 伸緒 (福島県立医科大学 医学部 小児科)
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キーワード:

三尖弁閉鎖不全、機能的肺動脈閉鎖、胎児

【諸言】肺動脈閉鎖(PA)をきたす胎児症例中には、高度の三尖弁逆流(TR)が原因の機能的PAが含まれる。プロスタグランジンE1製剤(PGE1)を使用せず、出生直後から積極的に生理的肺高血圧軽減をめざした治療を行った高度TR、機能的PAの2例を報告する。【症例1】在胎33週の胎児心臓超音波検査(fUCG)で高度TRと順行性肺血流減少を認め、在胎36週時に機能的PAに至った。右房拡大が著明で、三尖弁逆流圧較差(TRPG)は35mmHgであった。在胎37週、3000gで出生、心胸郭比(CTR) 82%の心拡大を認めた。肺血流は動脈管(PDA)に依存したがPGE1は使用せず、出生直後から人工呼吸管理と酸素およびNOの吸入療法を行った。順行性肺血流は徐々に増加し、日齢7にPDA閉鎖を確認した。12歳現在、症状はなくTRはmildであるが、左室収縮性は軽度低下し心筋緻密化障害の所見を認めている。【症例2】在胎32週のfUCGで高度TRとPDA狭小化(1.9mm)、順行性肺血流減少を認めた。母が在胎24週から32週までルイボスティーを飲用していた。在胎36週にPDAは5.1mmに開大したが機能的PAに至り、TRPG は44mmHgであった。在胎37週、2950gで出生、CTR 67%の心拡大を認めた。呼吸障害があり出生直後に人工呼吸管理を開始し、肺血流はPDAに依存していたがPGE1は使用せず、NICU入室後に100%酸素とNOの吸入を開始した。順行性肺血流は増加し、日齢1にPDAは閉鎖、TRも徐々に改善した。2ヶ月時点でTRはmildとなり、発育も良好である。【結語】fUCGの弁形態やTRPGの所見より出生後の肺血管抵抗低下に伴い順行性肺血流が得られると予想し、PGE1は投与せず、出生直後からの人工呼吸管理、酸素・NO吸入で改善を得た。胎児評価の重要性が示唆された。また、症例1では胎児期の影響が疑われる遠隔期心筋障害を認め、長期予後評価の重要性が示唆され、症例2ではTR発生の要因としてルイボスティーによるPDA狭小が疑われ、今後の症例蓄積の必要性が示唆された。