講演情報
[I-P01-3-07]双胎の一児にのみ頻脈性不整脈を長期間認めたが,胎児水腫を来さず自然軽快した症例
○中村 蓉子1, 渡部 誠一1, 渡邊 友博1, 高井 詩織1, 大鹿 美咲1, 遠藤 誠一2 (1.総合病院土浦協同病院 小児科, 2.総合病院土浦協同病院 産婦人科)
キーワード:
双胎、上室性頻拍、胎児水腫
【背景】胎児頻脈性不整脈は自然軽快するものもあるが,頻脈が持続した場合,胎児心不全,胎児水腫にいたり胎児死亡,新生児死亡にいたり予後不良である.今回一絨毛膜二羊膜双胎の一児にのみ上室性頻拍(以下SVT)を認め,比較的長期間続いたが胎児水腫にいたらず,抗不整脈薬投与せずに自然軽快した症例を経験したので報告する.【症例】体外受精で妊娠成立し,双胎のため当院産婦人科に在胎25週で紹介受診となった.在胎27週の定期受診の際に,一児にのみ心拍数200bpmの心房心室伝導が1対1のSVTを認めた.経過観察目的に入院となった.入院後もSVTは持続していた.母体へのジゴキシン投与について検討したが,もう一方の健常児への影響を懸念して投与しなかった.また早期娩出について検討したが,週数が27週と早く,未熟児合併症についての懸念もあり施行せず,胎児心不全兆候がみられた際には娩出する方針とし,無投薬で経過観察していた.在胎30週から頻脈は間欠的となり,心拍数は170bpmと低下したため外来で引き続き経過観察とした.以後はSVTの所見は認めずに経過し,在胎33週に陣痛発来し緊急帝王切開で娩出した.出生時体重は1734gと週数相当であり,出生時にSVTの所見はなかった.早産,低出生体重児のため当院新生児科に入院となり,入院後は心房性期外収縮の所見は散見されたものの,SVTは認めず,体重増加良好で日齢38に退院となった.現在は生後4ヶ月となり,SVTを認めず経過している.【考察】胎児性頻脈性不整脈に対する経胎盤的抗不整脈薬投与の安全性と有効性が確認され,保険適応となったが,双胎についての検討は少ない.本症例のように双胎の一児のみの場合の健常児への影響について検討した報告も少ない.幸い本症例では胎児水腫を来さず自然軽快したが,双胎の一児のみの頻脈性不整脈の治療適応について文献考察も交えて報告する.