講演情報
[I-P01-3-08]病態把握が遅延した胎児徐脈症例からの考察
○齋藤 寛治, 齋木 宏文, 松尾 悠, 工藤 諒, 西村 和佳乃, 滝沢 友里恵, 佐藤 啓, 桑田 聖子, 中野 智, 小山 耕太郎 (岩手医科大学 小児科学講座 小児循環器分野)
キーワード:
胎児徐脈、出生前診断、新生児
背景:胎児心エコー検査の普及に伴い、様々な疾患の胎児期の挙動が明らかとなってきた。稀な病態では出生前診断と生後早期の対応に終始し、病態精査が不十分に終わる症例がある。症例1: 在胎19週から胎児心拍数90/分の洞徐脈として経過観察となっていた。心不全徴候なく経過し、39週3072gで出生した。洞調律で平均児心拍は46/分、QT間隔 426msec (QTc 379msec)であり、啼泣時にも70/分程度の上昇にとどまった。生後循環適応のために循環作動薬を使用したが次第に軽快し利尿薬少量を内服し在宅管理となった。2歳頃まで心拡大を認めたが、以降は改善傾向となった。BNP値が軽度高値を維持していたことから4歳時心臓カテーテル検査を施行し、容量負荷に伴う拡張障害、passive PHを認め、循環予備能低下と判断しペースメーカー留置した。洞徐脈と心不全の所見から遺伝子検査によりQT短縮症候群2型と診断した。 症例2: 在胎38週まで異常は指摘されていなかったが、39週に胎児徐脈遷延を認め緊急帝王切開で出生。出生後の心電図で心拍数60/分の完全房室ブロックを認めた。EF40%程度と軽度駆出率低下を認め、急激な徐脈に収縮性が追従できなかったことが原因と判断され、一時ペーシング導入した。母胎抗SSA抗体が強陽性のため移行抗体による房室ブロックと診断されステロイドパルス療法を行った。EF 60%以上となり、次第に一度房室ブロックとなったため一時ペーシングを離脱し、退院した。6歳時、二枝ブロックを呈していたこと、完全房室ブロック発症が39週であり、また改善を認めたことから免疫原性房室ブロックとしては非典型であると考え抗SSA抗体分画を調べたところSSA-60kDaのみが強陽性であり免疫原性房室ブロックは否定的と考えられた。考察:徐脈性不整脈において救命のための診断・緊急対応は不可欠であるが、非典型例では更に原因究明に向け系統的評価を継続することが予後改善のために重要である。