講演情報

[I-P01-4-01]Fontan術後患者の運動時CVP上昇の首座は経肺圧上昇か肺動脈楔入圧上昇か?

高尾 浩之1, 杉山 幸輝1, 岩本 洋一2, 石戸 博隆2, 増谷 聡2 (1.埼玉医科大学 国際医療センター 小児心臓科, 2.埼玉医科大学 総合医療センター 小児科)
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キーワード:

Fonatn循環、運動負荷試験、中心静脈圧

【背景】Fontan術後患者における運動時CVPの上昇はpeak VO2の低下と関連し、問題となる。Fontan循環ではCVPは経肺圧(TPG)と肺動脈楔入圧(PAWP)の和である。本Pilot研究では、個々の患者で運動時に両者のいずれが大きく増加するかを検討する。
【方法】Fontan術後外来患者9例(中央値15歳)に対し、臥位エルゴメータを用いて運動負荷試験を実施した。安静から運動時に末梢静脈圧と生体インピーダンスを用いた心係数(CI)を連続測定した。CVPは1.6+0.68×末梢静脈圧で、TPGはカテーテル検査時の肺血管抵抗(RpI)を不変と仮定しRpI×CIで、PAWPはCVPからTPGを減じて推定し、安静時と最大運動時を比較した。
【結果】RpIは全員<2U*m2で、安静時から最大負荷時でCVP (11.3 vs 18.4mmHg), TPG (4.2 vs 7.7 mmHg), PAWP (7.1 vs 10.7 mmHg)は有意に上昇した。運動による増加分で4mmHg以上を有意とすると、9例中ΔTPGのみ有意上昇が1例、ΔPAWPのみ有意上昇が4例で、個人差が大きかった。前者はΔCIが5.8とかけ離れて大きかった症例で、後者4例のうち2例は16、27歳で運動とともにΔCI が比較的大きく良好と考えらえる症例であったが、1例は房室弁逆流が多く手術待機中の13歳、1例は多脾で心室拡張不全が疑われる15歳であった。
【考察】仮定・推定を多く用いた検討だが、運動によるCVPの上昇において、肺血管床と心室拡張能のいずれに課題が大きいかには大きな個人差があることが示唆された。いずれの課題が大きいかで選択する治療も異なり得る。症例の蓄積により本評価法がFontan術後のテーラーメイド治療の策定に有用かを検討していきたい。