講演情報
[I-P01-4-08]数理モデルを用いた左室流入拡張早期波(E)および組織ドプラ拡張早期波(e´)、E/e´の変化特性の検討
○土居 秀基1, 河島 裕樹1, 渡辺 恵子1, 西木 拓己1, 小澤 由衣1, 水野 雄太1, 榊 真一郎1, 益田 瞳1, 白神 一博1, 犬塚 亮1, 先崎 秀明2 (1.東京大学 小児科, 2.日本医療科学大学 小児地域総合医療学)
キーワード:
拡張障害、心機能、E/e'
【背景】左室拡張能はrelaxationとstiffnessの要素があり、それぞれ左室弛緩時定数:tauとstiffness coefficient:βを指標とする。実臨床ではエコーの簡便な指標である左室流入拡張早期波(E)や心房収縮期波(A)、組織ドプラの拡張早期波(e´)などの組み合わせにより左室拡張能は評価される。主にEは左房圧とtauに規定、e´はtauに規定され、Eをe´で除したE/e´の増加は左房圧上昇と相関すると報告されているが、その詳細な特性は不明である。【目的】シミュレーションモデルを用いてE/e´の変化特性を理解することを目的とした。【方法】MATLAB/Simulink®を用いて3要素ウインドケッセルモデルと時変エラスタンスモデルを組み合わせた数理モデルを作成した。左心室を回転楕円体の時変エラスタンスチャンバーと仮定しe´を算出した。モデル上で様々なパラメータを操作し、循環動態の変化やE/e´の変化特性を検証した。【結果】Β上昇により左房圧は著明に上昇し心拍出量や血圧は低下したが、tau延長は左房圧をわずかに上昇させるのみで心拍出量や血圧にほとんど変化を与えなかった。e´はtau延長により低下したが、β上昇により増加した。また、E/e´はtau延長、β上昇いずれにおいても低下した。E/e´と左房圧をともに上昇させる要素として体血管抵抗上昇とStressed Volume増加があり、E/e´を上昇させ左房圧を低下させる要素として左房コンプライアンス上昇があった。【結論】純粋な左室relaxation低下とstiffness上昇によってE/e´は低下する。左室拡張障害で観察されるE/e´の変化は血管収縮や前負荷増加といった循環を維持するための代償性変化や左房コンプライアンスの変化も反映しており、それらを考慮した実用が必要である。