講演情報

[I-P01-5-01]左心低形成症候群におけるNorwood手術のタイミングが神経発達に与える影響

小森 和磨, 小野 晋, 橘高 康文, 矢内 敦, 井上 史也, 樽谷 朋晃, 池川 健, 加藤 昭生, 若宮 卓也, 柳 貞光, 上田 秀明 (神奈川県立こども医療センター)
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キーワード:

HLHS、bPAB、Norwood

【背景】新生児期・乳児期早期の人工心肺使用は遠隔期の発達予後に影響を及ぼす可能性が指摘されている.左心低形成症候群(HLHS)において新生児期の人工心肺使用を回避し、乳児期以降にNorwood手術(NW)を施行する方策として両側肺動脈絞扼術(bPAB)が広く採用されているが,神経発達への影響は未解明である.【目的】HLHSにおけるNWのタイミングが神経発達に与える影響を検討する.【方法】2004~2024年に当院でFontan手術(TCPC)を施行されたHLHS患者50名のうち,発達検査を受けた36名を対象とした.初回手術でNWを施行したPN群,bPAB後に1か月でNWおよび,Blalock-Taussigシャント(BTS)あるいは右心室-肺動脈シャント(RV-PA)を受け,6か月でBCPSを受けたR2S群,bPAB後に3か月でNWおよびBCPSを受けた2S群の3群に分類し,発達指数を後方視的に比較した.発達指数は4歳以下では新版K式発達検査,5歳以上ではWISCを用いた.副次評価としてFontan術後のカテーテル検査データを比較した.【結果】3群間で発達指数に有意差は認められなかった.副次評価ではR2S群でPAIが高く、Rpが低い傾向が見られた.【考察】乳児期早期の人工心肺を用いた手術による神経発達への悪影響は限定的であると考えられる.一方、PAIやRpの良好な傾向から,2度目の姑息術を早期に行う戦略は肺血管成長に有利である可能性が示唆された.また、新生児期にNWを施行した症例が少なく,本研究のみで新生児期の人工心肺が遠隔期の神経発達への影響を論じることは困難である.【結論】bPABを行ったHLHS患者において,乳児期早期の人工心肺使用が遠隔期の神経発達に与える影響は限定的と考えられる.