講演情報

[I-P01-5-02]挙児希望契機にTCPC術後23年で導管置換を要した30歳女性の1例

島田 茉奈, 三井 さやか, 福見 大地 (日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院)
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キーワード:

TCPC、導管狭窄、FALD

【背景】近年TCPC後に手術を要する導管狭窄の報告が散見されるが、治療適応の判断は難しい。Fontan術後肝障害(FALD)との関連も指摘されている。【症例】30歳女性。在胎41週2日、2438gで出生、チアノーゼあり日齢1当院へ搬送され肺動脈閉鎖と診断。生後1か月時original BTS、3歳時LtBTS(5mm)、6歳時BDG、LtBTSは残した。7歳時TCPC(18mm)を施行し、以降ASA、利尿剤内服し退院。術後7か月の心カテでIVC=12mmHg、PAP=9-10mmHg。24歳TCPC17年後の心カテでIVC=12mmHg、SVC=11 mmHg、PAP=11 mmHg、導管前後での引き抜き圧較差はなかったが造影で導管中央に屈曲を認め、CTで石灰化を疑った。本人の症状なく経過観察とした。29歳時挙児希望あり他施設のプレコンセプション外来にて導管狭窄増悪の可能性を指摘され、30歳時CT再検で狭窄の増悪を認めた。同年心カテ再検しIVC=15mmHg、SVC=14mmHg、PAP=14mmHg、導管前後で平均1mmHgの圧較差を認め導管再置換の適応と判断、現在他院で手術待機中である。【考察】狭窄の要因として、抗血小板薬2剤の怠薬が多かったこと、TCPC後の心カテ評価の間隔が空いたことが挙げられる。他施設では導管の狭窄状況から妊娠希望に関係なく再手術を検討する、もし現状のまま妊娠するなら腹部下肢静脈圧上昇リスクと血栓リスクに対してヘパリンによる抗凝固療法が考慮される、との意見であった。一般的に導管置換の適応として、浮腫、蛋白漏出性胃腸症(PLE)、FALDの進行、運動耐容能低下などがある。狭窄の解除により、IVC圧が低下し肝線維化を抑制することで肝硬変リスクが減少すると考えられる。本症例では自覚症状なく肝硬変や腫瘤性病変は認めなかったが、導管狭窄の進行、挙児希望、γGTP・肝硬度高値でFALD進行の懸念があることから治療適応となった。【結語】TCPC後の患者は無症状の場合も定期的な画像評価が必要である。治療適応は慎重に検討すべきである。