講演情報
[I-P01-5-04]下行性食道静脈瘤を発症し内視鏡的食道静脈瘤結紮術を施行したGlenn循環、多脾症候群の1例
○檜波田 真実, 五味 遥, 岡田 優子, 森田 裕介, 岡 健介, 横溝 亜希子, 横山 孝二, 関 満, 佐藤 智幸, 熊谷 秀規, 田島 敏広 (自治医科大学とちぎ子ども医療センター)
キーワード:
Glenn循環、食道静脈瘤、多脾症候群
【はじめに】下行性食道静脈瘤は食道上部に形成される頭側から尾側へ向かう下向きの血行路を呈するまれな疾患で、SVC圧上昇に起因し、悪性腫瘍などによるSVCの外的圧迫などが要因として挙げられる。今回、Glenn術後でSVC圧高値の患者において下行性食道静脈瘤を発症したため内視鏡治療を行なった症例を経験した。【症例】両大血管右室起始、左上大静脈遺残、心室中隔欠損、共通房室弁、多脾症候群の12歳女児。胆道閉鎖症に対し生後1か月時に葛西手術が施行された。5歳時にFenestrated TCPCを施行したが、中心静脈圧上昇のため手術翌日にGlenn takedownとなった。8歳時の心臓カテーテル検査ではSVC圧は両側ともに15mmHg、IVC圧は12mmHgと高値であり、LSVC造影では上部食道周囲に分布する側副血管が発達、心収縮拡張能の低下も認めた。また、共通房室弁逆流が重度であり、8歳時に房室弁置換術を施行した。11歳時に黒色便、貧血(Hb 9.7 g/dL)のため入院し、上部消化管内視鏡検査(EGD)で頸部食道から中部食道にかけての食道静脈瘤を認めた。内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)を施行したが、便潜血陽性は持続していた。EVLの5か月後に再度EGDを施行。大腸内視鏡では血便の原因となるような病変は認めなかった。EGDではEVL施行後部位が瘢痕化し、食道の狭窄所見を認めた。また、EVL未施行部位には数条の静脈瘤を認め、再度EVLを施行した。食道静脈瘤からの大量出血は来たしていないが、注意深く経過観察を行なっている。【考察】SVC圧が高値の症例においては下行性食道静脈瘤の合併に留意する必要があり、本症例のように心機能が低下しているGlenn循環では発症リスクが上がる可能性がある。このような患者では血行動態の改善が得られない限り静脈瘤の再発を繰り返す可能性が高く、難治性の病態であるが、EVLで出血リスクの高い部位の治療を行うことで、大量出血の予防に一定の治療効果はあると考えられた。