講演情報

[I-P01-5-05]単心室の機械弁房室弁でstuck valveを起こした2例

高尾 浩之, 小島 拓朗, 杉山 幸輝, 戸田 紘一, 長岡 孝太, 鍋嶋 泰典 (埼玉医科大学 国際医療センター 小児心臓科)
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キーワード:

stuck valve、機械弁、単心室

【背景】stuck valveは機械弁で起りやすく、血栓弁や弁変性を契機に発症し、心原性ショックの原因となる。
【方法】2011~2025年で単心室の房室弁でstuck valveを起こした症例を比較した。
【症例1】2歳8か月男児、左心低形成症候群。生後9カ月でGlenn手術、三尖弁置換術(ATS16mm)を行った。嘔吐、下痢を主訴に受診し、血液検査でCRP上昇、肝機能障害があった。INRは7.1と延長しておりワーファリンは内服中止した。心臓超音波で弁は異常なく左胸水があった。感染契機の心不全を考慮したが、入院3日後のvalve cineで一弁が動いておらずstuck valveと診断した。三尖弁のinflowは2m/sだった。血行動態は安定しており、入院11日目に三尖弁再弁置換術(ATS16mm)を行った。stuckの原因は血栓弁だった。術後経過は良好でFontan手術に到達した。
【症例2】19歳男性、右側相同、右室型単心室、共通房室弁であり2歳でFontan手術、共通房室弁置換術(Carbomedics 25mm)、15歳でATS 26mmに再置換を行っていた。腹痛、下痢を主訴に受診し、血液検査でCRP上昇と、INR 4.8の過延長を認めた。入院時の心臓超音波で弁の開閉は異常なく、ワーファリンは内服中止した。入院4日目の血液検査で肝腎機能障害の進行あり、valve cineで一弁が動いておらずstuck valveと確認された。心原性ショックで搬送され、心臓超音波では両弁とも動いておらずinflowのVmaxは4m/sだった。緊急手術となり、血栓弁を認め、On-X 25mmを留置した。術後経過は良好だった。
【考察】2例は消化器症状から発症しており、嘔吐や下痢に伴う脱水が血液濃縮や凝固能に影響した可能性がある。更にワーファリン休薬によるリバウンド現象で一時的に凝固能が亢進し、血栓形成を助長した可能性が示唆された。