講演情報

[I-P01-5-07]グレン術後の蛋白漏出性胃腸症の管理

工藤 諒1, 松尾 悠2, 西村 和佳乃3, 高橋 卓也4, 齋藤 寛治5, 佐藤 啓6, 桑田 聖子7, 中野 智8, 小泉 淳一9, 齋木 宏文10 (1.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 2.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 3.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 4.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 5.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 6.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 7.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 8.岩手医科大学附属病院 小児科学講座, 9.岩手医科大学附属病院 心臓血管外科学講座, 10.岩手医科大学附属病院 小児科学講座)
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キーワード:

グレン術後、蛋白漏出性胃腸症、タダラフィル

【背景】蛋白漏出性胃腸症(PLE)発症には多様な機序が想定される.フォンタン術後においては、低い心拍出量や高い中心静脈圧(CVP)の関与が指摘されているが,CVPの低い状態で発症する症例も存在し,背景病態の把握が重要となる.【症例】左心低形成症候群の2歳女児.ノーウッド手術変法術に術後心不全が遷延し,姑息的に早期グレン手術を選択した.上大静脈圧は高く, 静脈-静脈短絡を認めたが酸素飽和度は維持され, 心不全徴候は改善した.利尿薬とタダラフィル・マシテンタン併用下に在宅管理に移行したが, 退院1か月後から低蛋白血症を認め, PLEと診断した.ステロイド・利尿薬・肺血管拡張薬・低分子ヘパリン等各種治療に抵抗性であった. 消化管内視鏡で白色絨毛の所見を認め,高度リンパ浮腫がPLEの原因と考えられた.高度の脂肪制限食で改善傾向を認めたが,次第に管理不能となり,毎週蛋白補充を行い管理した.次第に蛋白低下に歯止めが効かなくなり, 病態を再検討した.利尿薬4種併用下に常時後負荷が低い傾向を認めたため, 血管過拡張がリンパ系負荷を増強した可能性を考慮し肺血管拡張薬を順次中止したところ,末梢血管拡張の改善とともにPLE管理が可能となった.【考察】蛋白を担体とするタダラフィルは低蛋白時に生理活性が強まり,フォンタン術後に合併したPLEを増悪させ得るという報告があり, 本症例では血管拡張によるリンパ流量の増大が腸管への蛋白漏出増加に寄与した可能性が示唆された.フォンタン不全には体血管抵抗が低下する病型があり, CVPが低くてもPLEを発症し得る. 類似した病態が肺血管拡張薬により誘導されCVPが低い蛋白漏出性胃腸症発症に寄与する可能性が示唆された.【結論】肺血管拡張薬による体血管抵抗の低下はPLEの増悪に寄与し,グレン術後においてもフォンタン術後遠隔期の高拍出性心不全や臓器障害に類似した病態を構築する可能性がある.