講演情報

[I-P01-5-08]先天性心疾患術後の重症蛋白漏出性胃腸症に対する治療変遷-侵襲的リンパ管治療介入を含めた検討-

原田 智哉1, 大橋 啓之1, 三谷 義英1, 牧野 宏俊1, 乙部 裕1, 武岡 真美1, 大矢 和伸1, 淀谷 典子1, 成島 三長3, 中山 祐樹2, 澤田 博文1 (1.三重大学医学部附属病院小児科, 2.三重大学医学部附属病院心臓血管外科, 3.三重医大学医学部付属病院形成外科)
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キーワード:

術後合併症、蛋白漏出胃腸症、リンパ管治療

【背景】蛋白漏出胃腸症(PLE)の予後は改善傾向にあり、近年、リンパ管への介入が有効だった症例も散見される。当院では2017年より先天性心疾患術後乳び胸を中心にリンパ管への介入を行っており、症例によってはPLEにも応用している。【方法】2005年以降に入院加療を要したPLE症例の治療経過を後方視的に検討した。【結果】症例は5例。症例1~4はFontan術後、症例5はFallot四徴症の心内修復術後。2013年以降は入院を要するPLEはなし。3/5例が死亡し、うち2例は2017年までに死亡。症例1は三尖弁閉鎖症に対しAPC-Fontan術施行。術後16年でPLE発症。CVP12mmHg。低栄養を認め、内科治療で栄養状態改善後にTCPC conversionを実施したが、術後早期死亡。症例2はHLHSに対し5歳時にFontan手術施行。術後5年でPLE発症。発症時CVP14mmHg。肺血管拡張薬を含む内科治療や左肺動脈狭窄に対する血管形成術を実施。消化管出血あり、ステロイド使用せず。発症後4年で死亡。症例3はHLHSに対し4歳でfenestrated Fontan手術施行。1年後PLE発症。発症時fenestrationは閉塞。肺血管拡張薬を含む内科治療、fenestration再造設を行ったがCVP17-19mmHgで推移。発症後12年で死亡。症例4は右心系単心室に対し3歳でFontan術施行。術後6年でPLE発症。CVPは10mmHg程度。無名静脈狭窄に介入したが、最終的に完全閉塞した。内科治療抵抗性で、Fontan術後23年時に下肢でリンパ管静脈吻合術を施行。術後2年間ステロイド減量してもPLEの寛解を維持。症例5は4歳でFallot四徴症の心内修復術を施行。27歳(術後23年)で肺動脈狭窄、右心不全を背景にPLEを発症。RVEDVI215.6、RVEF38.4%。ARBの導入、右室流出路形成術および三尖弁置換術実施し、術1年後のRVEDVI170.8 、RVEF45.4%。PLEは術後10年間寛解を維持。【結語】重症PLEの予後は依然不良だが、発症原因を改善し得た症例では、寛解を維持できた。一部の症例ではリンパ管への介入が有用である可能性がある。