講演情報
[I-P01-6-05]房室中隔欠損症術後、消化管出血を契機に診断した多脾症・肝外門脈閉塞症・食道静脈瘤の4歳例
○松下 賢, 増谷 聡, 石戸 博隆, 岩本 洋一 (埼玉医科大学総合医療センター 小児科)
キーワード:
多脾症、肝外門脈、房室中隔欠損症
【背景】多脾症候群は胸腹部臓器の左側相同から疑われ、診断される。心エコーでは下大静脈欠損が診断契機になることが多い。しかし多脾症候群に下大静脈欠損は必発ではなく、未診断症例も多いと推測される。先天性心疾患手術後も多脾症候群が覚知されず、経過中に消化管出血を契機に診断された多脾症・肝外門脈閉塞症・食道静脈瘤の1例を経験したため報告する。【症例】4歳女児。10か月の時に他院で房室中隔欠損症の心内修復術を受け、術後経過は良好であった。入院3日前から腹痛および上気道症状を自覚し、入院2日前から黒色便を認めた。入院当日体動困難を認め、当院へ来院した。血液検査でHb 3.9 (g/dL)、抗原検査でインフルエンザBが陽性であった。貧血・黒色便の精査目的に当院PICUに入院となった。入院後挿管下で実施した上部消化管内視鏡検査では、食道静脈瘤(F2)を認めたが活動性出血は指摘できなかった。心エコー上は良好な房室中隔欠損術後で心機能低下は認めなかった。胸腹部造影CT上は、肝外門脈の閉塞を確認したほか、下行大動脈より背側を左右それぞれに上行する「大静脈」が腎静脈合流部の頭側で「下大静脈」に一本化して右房に還流する特異な形態を認めた。このほか両側が左側形態の気管支、対称肝、大小複数の脾臓を認め、多脾症候群と診断した。肝移植検討目的に移植可能施設へ転院した。【考察】本症例はエコー上「下大静脈」が正常に右房に還流しているように描出されたため、血管奇形および多脾症候群の診断が困難であったと推察される。多脾症候群には心外合併症もあり得るため、心疾患診断時には診断が容易でない多脾症候群が存在し得ることに留意することが大切と考えられた。