講演情報

[I-P01-6-06]左室緻密化障害を合併した多孔性心房中隔欠損の治療方針

平田 拓也, 福村 史哲, 久米 英太朗, 赤木 健太郎, 馬場 志郎, 滝田 順子 (京都大学医学部附属病院 小児科)
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キーワード:

心房中隔欠損、左室緻密化障害、心不全

【背景】心房中隔欠損(ASD)は右室容量負荷によって左心機能が低下するが、左室容量負荷を軽減する側面もある。左心不全を合併する場合、試験的バルーン閉鎖が推奨されるが、多孔性ASDでは困難である。今回、左心不全を伴う左室緻密化障害(LVNC)を合併した多孔性ASDに、経皮的心房中隔欠損部分閉鎖術を施行し良好な経過を得た。【症例】32歳女性。6歳の学校健診で不完全右脚ブロックからASDおよびLVNCと診断。9歳時のカテーテル検査でQp/Qs 1.7より手術適応なしと判断されたが、左室拡大と僧帽弁逆流の進行からエナラプリル導入となった。24歳時に再度手術適応評価目的で当院紹介。Qp/Qs 1.48、RVEDV 126.1%、LVEDV 114.4%から非適応と判断。31歳時に側弯症の手術を契機に右心不全を発症。この際、経食道心臓超音波検査(TEE)で2つの欠損孔を確認し、外科的閉鎖も検討したが、手術侵襲と完全閉鎖による左心不全悪化の可能性から、カテーテル治療を選択。術中TEEで欠損孔を4つ認め、最大欠損孔にFigulla Flex II 27mmを留置。他の2欠損孔は圧排により閉鎖、残る後下方の6mmの欠損孔は閉鎖しなかった。術後は左室収縮が維持され、現在利尿剤減量中である。【考察】ASDによる左心機能低下は右心負荷による左室収縮バランス異常が関与している。特にLVNCを合併する症例では左室容量負荷耐性の評価が重要だが、多孔性ASDでは困難である。本症例はエナラプリルにより左室収縮能が維持されており完全閉鎖も検討したが、左心不全増悪のリスクを否定できず、一部シャントを残す方針とした。結果、合併症なく順調な経過をたどっている。【まとめ】左心不全と伴うLVNCを合併した多孔性ASDに対し、経皮的心房中隔欠損部分閉鎖術が有効であった。