講演情報
[I-P01-6-07]片側末梢性肺動脈狭窄に対するバルーン形成術後に両側肺水腫を発症した肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損,主要体肺側副血管術後の小児例
○福山 隆博, 丸山 篤志, 住友 直文, 小柳 喬幸 (慶應義塾大学 医学部 小児科)
キーワード:
両側肺水腫、肺動脈バルーン形成術、主要体肺側副血管
【背景】肺動脈バルーン形成術(BPA)後の肺水腫は,血管の拡張による障害や肺動脈の高圧暴露による虚血再灌流症候群である.高度狭窄病変・中枢側高圧・肺血管抵抗高値は高リスクとされ, サイトカインを介した炎症の拡散により反対側にも肺水腫を発症し, 重症化する. 【症例】4歳女児.肺動脈閉鎖兼心室中隔欠損,主要体肺側副血管に対して乳児期に段階的修復術を実施し,月齢6に心内修復に到達した.術後の左末梢性肺動脈狭窄(LPPS)に対しBPAを複数回実施されたが,効果は部分的だった.3歳時の右室流出路再建術および左肺動脈形成術後にもLPPSが残存し,肺血流シンチグラフィーでは右:左=92:8だった.術後8か月の心臓カテーテル検査では右室/左室圧 58/76 mmHg,左-中枢肺動脈圧較差 34 mmHg,右/左/合成肺血管抵抗係数は4.4/13.1/3.3 W.U・m2だった.LPPS最狭部1.0 mm, リファレンス径 2.0 mmに対し4.0 mmのバルーンで拡張し,狭窄部は2.3 mmに拡張された.造影剤の血管外漏出や気道出血がないことを確認し,一般床に抜管帰室した.帰室時より発熱があり,術後10時間でピンク色泡沫状痰,急速な低酸素血症進行(SpO2 最低値51%),胸部レントゲンで両側のbutterfly shadowを認め,両側肺水腫と診断した.挿管管理,最大PEEP 10 cmH2Oの従圧式強制換気を行い呼吸状態は改善した.CRPは最大5.9 mg/dLに増加し,発熱は3日目まで持続した.3日目に抜管,9日目に自宅退院となった.【考察】本症例は,術前のLPPSが高度で肺水腫発症の高リスクだった.発熱とCRP上昇はBPAによる炎症の拡散を示唆し,反対側の肺水腫発症の一因であると考える.BPA直後に発熱した場合は,重症肺水腫の発症に十分注意する必要がある.