講演情報
[I-P01-6-08]小児心臓カテーテル検査後に大腿動脈血栓症をきたしサーモグラフィーが有用であった1例
○野々原 洋輔1, 上野 薫1, 宮里 茉樹1, 後藤 直人1, 堀 創馬1, 渡辺 健2, 鶴見 文俊1 (1.公益財団法人 田附興風会 医学研究所 北野病院, 2.たかばたけウィメンズクリニック)
キーワード:
カテーテル治療、術後合併症、サーモグラフィー
【症例】2か月男児【現病歴】大動脈縮窄複合術後再狭窄に対して,経皮的バルーン拡張術目的に心臓カテーテル検査を施行した.カテーテル検査終了後,約5時間後に右下肢の冷感および足背動脈触知の左右差(右<左)を認めた.術前から足背動脈での触知が右<左であったこと,カラードプラ超音波検査で右膝窩動脈の拍動性血流が描出されたことから,血管攣縮による一過性の変化と考えて経過観察を行った.術翌日の朝時点でも右下肢の冷感と足背動脈触知の左右差は残存していた.サーモグラフィー検査を行ったところ,右下肢の温度低下を認めたため,造影CTおよび超音波検査を行った.造影CTで右大腿動脈の閉塞を認め,超音波検査では同部位に0.46mm(狭窄近位部の径2.71mm)の狭窄を認め,血管壁構造に異常がないことから右大腿動脈血栓症と診断し,ウロキナーゼ5000U/kg/dayの持続投与を開始した.投与翌日のサーモグラフィーでは下肢の温度差は消失した.投与5日目に超音波検査で大腿動脈の形態的な狭窄を認めなくなったため,ウロキナーゼは終了した.PT-INR=1.5-2.0を目標にヘパリンブリッジを行いながらワルファリンと抗血小板量のアスピリン内服とし発症13日後に退院した.退院後4か月の時点での超音波所見で明らかな狭窄なく, 両側足背動脈触知良好であり,後遺症は認めない.【考察】心臓カテーテル検査に伴う合併症の1つに大腿動脈血栓症があり,その検出においてサーモグラフィーが有用であるとの報告がある. 大腿動脈血栓症の診断には,主に超音波検査や造影CT検査が用いられるが,超音波検査は創部に触れ痛みを伴いうることや,定量的な評価には技術を要すること,造影CT検査は造影剤使用に伴うリスクや骨盤部への被曝を伴うことなどが問題点として挙げられる.一方,サーモグラフィーは簡便,迅速で侵襲や被曝も伴わない検査であり,大腿動脈閉塞を疑った際の最初の検査として検討すべきである.また血栓溶解療法の治療効果判定にも有用である.