講演情報

[I-P01-6-10]敗血症性肺塞栓症を合併した感染性心内膜炎の1例

工藤 舞花, 中村 美結, 山口 賢一郎, 田代 克哉 (唐津赤十字病院 小児科)
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キーワード:

敗血症性肺塞栓症、感染性心内膜炎、心室中隔欠損症

【諸言】左右短絡疾患で感染性心内膜炎を発症した際、疣腫の一部が肺へ散布され敗血症性肺塞栓症を起こすことが知られている。今回心室中隔欠損症(以下VSD)に感染性心内膜炎を発病し、敗血症性肺塞栓症を合併した症例を経験したので報告する。【症例】14歳女子。膜様部小欠損のVSDに対し1年に1回経過観察されていた。原因不明の発熱8日目に炎症所見が高値のため当科へ紹介受診となった。初診時心拍数113/分、血圧73/55mmHg、意識朦朧でありショック状態だった。心音はVSDに伴う汎収縮雑音とIII音奔馬調律を聴取した。心エコー検査で心室中隔の欠損孔の右室側辺縁に8mm大の疣腫を認め、病歴・血液検査所見と合わせて感染性心内膜炎と診断した。血液培養からメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され起炎菌と断定した。経過中に胸痛や咳嗽、血痰があり、16病日の胸部CT検査で肺に多発する結節影を認めた。病態と画像所見より敗血症性肺塞栓症と診断した。肺病変は当初充実性結節影であったが、炎症の鎮静化とともに空洞病変へ変化した。胸部単純写真では評価は困難でCT検査が有用であった。23病日に解熱に至り、43病日には疣腫の消失を確認し、59病日に後遺症なく退院となった。【考察】敗血症性肺塞栓症は右心系感染性心内膜炎やカテーテル感染が一次感染巣となり、一次感染巣から感染性血栓が肺に塞栓することで発症する。起炎菌に応じた抗菌薬治療が基本となる。Rui Yeらの報告では胸部CT検査で結節病変が66.4%、空洞病変が55.9%の症例に認めたとされており、複数の末梢肺結節や胸膜に接する楔形の末梢病変、空洞病変などは特徴的な所見と考えられる。本例での肺病変は既報に合致する典型的な経過をたどった。【結語】右心系感染性心内膜炎では発熱持続時や胸痛などの症状出現時には敗血症性肺塞栓症の合併を疑い、積極的に胸部CT検査を行う必要がある。