講演情報
[I-P02-1-02]7年で4回の心外膜リード断線を来した三尖弁閉鎖症、完全房室ブロック、心外導管型フォンタン手術後の11歳男児
○粟野 裕貴1, 石黒 想子1, 松木 惇1, 藤井 隆1, 落合 智徳2, 水本 雅弘2, 鈴木 康太1 (1.山形大学 医学部 小児科, 2.山形大学 医学部 第二外科)
キーワード:
リード断線、フォンタン、完全房室ブロック
【背景】心外膜リードの累計リード不全回避率は5年で34-95%とされ、リード断裂やexit blockが主な原因と報告されている。しかし、複数回のリード不全を経験した症例に関する報告は少なく、原因や頻度は明確ではない。今回、心外導管型フォンタン手術後に複数回の心外膜リード断線を来した11歳男児例を報告する。【症例】11歳男児。胎児エコーで三尖弁閉鎖症が疑われ、出生後に三尖弁閉鎖症 と診断された。一過性に2:1房室ブロックを認めたが、日齢4で消失した。日齢8に肺動脈絞扼術を施行され、術後に再度2:1房室ブロックを認めた。生後5か月時には完全房室ブロックに移行し、電気生理学的検査ではヒス束遠位ブロックの所見だった。生後6か月時にDamus-Kaye-Stansel吻合術、両方向性グレン手術、ペースメーカー植込み術 (DDD)、1歳9か月時に心外導管型フォンタン手術を施行された。4歳時にジェネレーター近傍でのリード断線を認めペースメーカーの再植込み術を施行された。6歳時に心房リードの再断線が判明し、ジェネレーター付近の断線のためリード修復術を施行された。8歳時には心室リードの不全断裂を認め、ペースメーカー再植込み術が施行された。その後、心室リードの刺激閾値の上昇を認めたが、出力調整で対応した。11歳時に心房リード抵抗値が上昇し、リード断線と判断し心房、心室リード再留置術を施行された。【考察】心外膜リードの断線は、成長や運動によるリードへの機械的ストレスや呼吸運動などによる圧迫や摩耗が主な要因とされる。本症例では短期間で複数回の断線を認め、心外膜リードの耐久性を考慮しても特異な経過である。一般的な断線の要因に加え、複数回の手術による癒着がリードの固定性や屈曲ストレスを増し、断線の一因となった可能性がある。リード不全を予防するため、機械的ストレスや摩耗を受けにくいリード経路の確保やリードへ過度な負荷がかかる運動の制限などが必要と考えられる。