講演情報
[I-P02-1-04]心臓再同期療法を施行した小児3例の臨床経過
○西木 拓己, 河島 裕樹, 土居 秀基, 渡辺 恵子, 小澤 由衣, 水野 雄太, 榊 真一郎, 白神 一博, 益田 瞳, 犬塚 亮 (東京大学医学部附属病院 小児科)
キーワード:
心不全、心臓再同期療法、CRT
【背景】心臓再同期療法(CRT)は心室同期不全を伴う心不全の治療法として成人では確立されているが、小児での適応や効果の発現時期は明確でない。また小児で主に用いられる心外膜リードでは、至適な刺激部位や効果が心内膜リードと異なるとされている。当院でCRTを実施した小児3例の経過を報告、考察した。【症例1】先天性房室ブロックで、日齢0よりDDDモードでpacing管理された。植込後から心室同期不全があり、左室収縮率(LVEF) 10%程度まで低下し、月齢5でCRTへupgradeした。直後からQRS時間は短縮、心室同期は回復した。LVEFは術後3カ月で49%、1年で58%と改善し、心不全症状は消失。抗心不全薬を漸減中である。【症例2】出生後に左室の拡張と収縮力低下を認め拡張型心筋症が疑われた。心機能は徐々に悪化しLVEF 12%となり、心室同期不全を認め、月齢3でCRTを導入した。術後からQRS時間の短縮、同期性の改善を認めた。LVEFは術後6ヶ月で27%、1年で42%と改善傾向で、内服の抗心不全薬は継続しているが良好な成長発達が得られている。【症例3】完全型房室中隔欠損症で、心内修復術、僧帽弁置換術を実施後に完全房室ブロックとなり、月齢3で永久pacemakerを植え込まれた。10歳頃より心拡大が進行しLVEF低下、心室同期不全を認め、13歳時にCRTへupgradeした。しかし、術後も心機能や同期性の改善に乏しく、移植登録を目指している。【考察】成人ではCRT後6か月程度で自覚症状や心機能が改善することが多いが、症例2ではLVEFの改善に1年を要した。一方で、心不全症状は症例1、2ともに術後早期から緩和していた。一般にペーシング誘発性の心機能低下はCRTへの反応が良好とされるが、症例3では改善が限定的であった。長期の心不全に伴う不可逆的な心筋リモデリングが、CRTによる同期性回復を制限した可能性がある。小児におけるCRTの導入時期や適応基準、治療効果の発現時期は明確でなく、さらなる検討が必要である。