講演情報

[I-P02-2-03]CoroFlowTMによる冠動脈機能評価により冠動脈拡張能異常が示唆されたホジキンリンパ腫の1例

吉沢 雅史, 菊地 夏望, 須長 祐人, 河野 洋介, 長谷部 洋平 (山梨大学 小児科)
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キーワード:

冠動脈機能、冠動脈拡大、腫瘍循環器

【背景】
近年冠動脈疾患は器質的な異常のみならず、機能的な異常にも注目が集まり冠動脈機能評価の重要性が高まっている。今回冠動脈拡張を呈したホジキンリンパ腫の症例にCoroFlowTMによる冠動脈機能評価を行った。
【症例】
12歳女児。食欲低下、体重減少の精査で前縦隔腫瘤を指摘され当院に入院。ホジキンリンパ腫の診断となった。入院時よりぶどう膜炎や心嚢液の貯留に加えて左右冠動脈にZscore 4-5程度の拡張が認められた。他の川崎病症状はなくこれまでに川崎病や不明熱の既往がないことから、腫瘍随伴症状による心血管炎と診断しアスピリン、ヘパリン、ステロイドによる治療を開始した。
化学療法により腫瘍は寛解し、心血管炎所見も改善傾向となったが冠動脈拡張は退縮せず、軽労作でST低下を伴う頻脈、動悸、ふらつきの症状が認められた。冠動脈虚血による可能性を考慮し、冠動脈形態評価、冠動脈機能評価を目的に心臓カテーテル検査を施行した。
冠動脈造影では左冠動脈前下行枝が5.3mmと拡大していた。瘤前後での狭窄は認められなかったが、瘤前後での冠血流予備量比(FFR)が0.80と正常下限であった。右冠動脈は#1で最大径6.6mm×16mmの瘤形成を認めた。瘤内の造影剤うっ滞が認められたが瘤前後での形態的狭窄はなく、FFRも正常であった。冠血流予備能(CFR)は 2.0(基準値≧2.0), 微小血管抵抗指数(IMR) 14(基準値<25)と冠血流予備能が正常下限であった。
【考察】
ホジキンリンパ腫に随伴した血管炎および化学療法の影響により冠血管および冠微小循環に障害を生じたと考えられた。有意な冠動脈狭窄を認めなくても、微小血管を含めた血管拡張能が低下してる可能性が示唆された。
【結論】
冠動脈形態が正常であっても冠微小循環に影響を及ぼしている可能性があり、川崎病など冠動脈に炎症を生じる疾患や冠動脈スイッチ術後などに虚血の症状がある場合は、小児においても冠動脈機能評価を進めていくことが必要である。