講演情報
[I-P02-2-05]壁内走行を伴う冠動脈異所性冠動脈洞起始にUnroofing techniqueを用いて冠動脈形成術を行なった症例の術後経過・合併症の検討
○細川 大地1, 齋藤 美香1, 吉敷 香菜子1, 上田 知実1, 矢崎 諭1, 嘉川 忠博1, 島田 勝利3, 小森 悠矢2, 和田 直樹2 (1.榊原記念病院 小児循環器内科, 2.榊原記念病院 小児心臓血管外科, 3.聖マリアンナ医科大学 小児心臓血管外科)
キーワード:
冠動脈起始異常 (AAOCA)、Unroofing technique、大動脈弁逆流
【背景】先天性冠動脈疾患は稀な疾患であるが、若年者の突然死の原因疾患として重要である。その一つである、冠動脈異所性冠動脈洞起始 (anomalous aortic origin of coronary artery: AAOCA)で壁内走行を伴う症例に対してはunroofing techniqueによる外科手術が一般的に行われるが、その成績や合併症についてのまとまった国内での報告はない。【目的】AAOCAに対するunroofing technique適応症例の手術成績を検討する。【対象と方法】2008年3月から2024年8月に当院で壁内走行を伴うAAOCAに対しunroofing techniqueによる外科治療を行った16症例について後方視的に検討した。【結果】手術時年齢中央値は13.1歳 (3-49歳)、体重中央値は 52.1kg (17.6-66.5kg)、男性14例(88%)、右冠動脈左冠動脈洞起始 (AAORCA) 10例 (63%)、左冠動脈右冠動脈洞起始 (AAOLCA) 5例 (31%)、左冠動脈無冠動脈洞起始 1例 (6%)であった。術前に失神、胸痛等の自覚症状を10例 (63%) (AAOLCA5例、AAORCA5例)で認めた。観察期間の中央値は6ヶ月 (1ヶ月-16年)。術後検査として経胸壁心エコー検査16例、造影CT12例、心臓カテーテル検査4例が行われた。追跡期間中の死亡例はなく、冠動脈に対する再介入を要した症例はなかった。大動脈弁逆流 (AR) 新規発症または増悪を 6例 (37.5%)で認めた。重症度はいずれも軽度以下であった。大動脈二尖弁の症例と、交連に手術操作が及んだ1例では術前認めなかったARが術後軽度となったが、介入を要した症例はなかった。2例に軽度の壁運動低下を認めたが、心機能低下や術後の症状が再燃した症例はいなかった。【結論】壁内走行を伴うAAOCAに対するunroofing techniqueによる外科治療後において、死亡例や冠動脈への再介入を要した症例は認めず良好な成績であった。本術式では交連の近傍に操作が及ぶため、術後にARが出現する可能性があり、進行の有無についても術後遠隔まで慎重にフォローする必要がある。