講演情報

[I-P02-2-06]冠動脈病変の進行により段階的治療を要した大動脈弁・弁上狭窄の1例

加藤 周1, 松尾 久実代1, 津村 早苗2, 金谷 知潤2, 吉岡 大輔3, 宮川 繁3, 森 雅啓1, 浅田 大1, 石井 陽一郎1, 青木 寿明1 (1.大阪母子医療センター 循環器科, 2.大阪母子医療センター 心臓血管外科, 3.大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科)
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キーワード:

冠動脈低形成、冠動脈狭窄、大動脈弁狭窄

【はじめに】先天性冠動脈異常は自覚症状を伴わない場合も多いが、なかには心筋梗塞、不整脈、突然死などを引き起こす場合がある。今回は学童期に心筋虚血症状をきたした小児の症例を報告する。【症例】7歳男児。労作時の苦痛を主訴に入院。既往歴として乳児期に二尖大動脈弁、先天性大動脈弁狭窄(AS)、左冠動脈(LCA)起始部狭窄を指摘、生後8か月で大動脈弁上狭窄解除術、大動脈弁形成術(AVP)、冠動脈バイパス手術(CABG)(左内胸動脈(LITA)-左前下行枝(LAD))施行。術後1年でLITA閉塞もLAD血流は確認、右冠動脈(RCA)低形成を指摘されていた。AS進行し6歳でAVP、成長してから大動脈弁置換術(AVR)の方針であった。今回入院時の心電図で2、3、aVF、V4-V6でST低下、心エコーで心機能低下、大動脈弁逆流(AR)増悪。冠動脈は評価できず。血液検査でトロポニンI、CK-MBなど逸脱酵素上昇あり。当初はAR増悪、拡張期血流減少による冠血流低下、心不全としてカテコラミンと利尿剤開始したが、自覚症状はおさまるも検査で虚血性所見は改善みられず。選択的冠動脈造影でRCA基部は細いが狭窄部位は指摘できず、LCA狭窄なし。入院5日目にAVR施行、LCA入口周辺に大動脈壁張り出しあり、切除。RCAは細いが入口に構造異常なく介入なし。術後も血圧低下とそれに伴う心機能低下を繰り返すため、再度選択的冠動脈造影をしたところ、細いRCA起始部の遠位に狭小部位あり、転院してCABG(右内胸動脈(RITA)-RCA)施行。術後経過は良好でCTでRITAの開存を確認して術後27日目に退院した。【考察】本症例は以前から冠動脈異常を指摘されており、当初の冠動脈造影でも判定が困難であった。他に心筋虚血をきたしうる要素があったことから、まずはそちらに介入したが、臨床経過から改めて冠動脈異常を疑ったことで診断、治療をすることができた。【結語】冠動脈異常をもつ患者が心筋虚血症状をきたした場合は冠動脈所見を入念に確認する必要がある。