講演情報

[I-P02-2-07]当院における先天性冠動脈起始異常症の診断と予後

出口 拓磨1, 林 立申1,3, 塩野 淳子1, 坂 有希子2, 阿部 正一2, 堀米 仁志1 (1.茨城県立こども病院 小児循環器科, 2.茨城県立こども病院 心臓血管外科, 3.筑波大学医学医療系 小児科)
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キーワード:

冠動脈起始異常、左冠動脈肺動脈起始、冠動脈対側冠動脈洞起始

【緒言】冠動脈起始異常症は無症状から突然死まで多彩な症状を呈し、緊急手術を要する疾患もある。
【目的】冠動脈起始異常症の診断と予後について検討する。
【対象】2000年1月から2024年12月に当院で診断した冠動脈起始異常症を対象とした。単一冠動脈および他の先天性心疾患に伴うものは除外した。
【方法】診療録から病型、診断時年齢、診断契機、診断に有用であったモダリティ、外科的介入の有無、予後(追加介入の有無、最終観察時の心エコー所見、運動制限など)を抽出し、検討した。
【結果】対象は8例(男3)、左冠動脈肺動脈起始(ALCAPA) 5例、右冠動脈左冠動脈洞起始(AAORCA) 2例、左冠動脈右冠動脈洞起始(AAOLCA) 1例。診断時年齢の中央値は12か月(1か月-12歳)であった。乳児期に診断された4例はいずれもALCAPAだった。診断契機は有症状 6例、うち心不全 4例、運動時失神 2例。無症状 2例、いずれもAAORCAで川崎病後の心エコーで偶発的に診断された。診断に寄与した主な画像モダリティ(重複あり)は心エコー 6例、CT 6例、血管造影 3例だった。2014年以降に診断された症例では血管造影は実施されなかった。外科的介入は5例で実施された。全例がALCAPAで冠動脈修復術に加えて2例で僧帽弁への介入を要した。追跡期間の中央値は7年(4-20年)で、最終観察時に全例が生存していた。追加介入は2例で経皮的肺動脈形成術と僧帽弁再置換術であった。LVEF中央値 68%(58-80%)だった。運動制限を指示されたのは未手術のAAOLCA 1例のみであった。
【結語】近年は血管造影なしで冠動脈起始異常症を診断していた。手術例は全例で運動制限が不要であったものの、一部で追加介入を要した。未手術例も現時点で予後は良好であったが長期的な観察は必要と考える。