講演情報

[I-P02-3-02]漏斗部心室中隔欠損症の胎児診断の現状と課題

池川 健1, 川瀧 元良2, 加藤 昭生1, 若宮 卓也1, 小野 晋1, 柳 貞光1, 上田 秀明1 (1.神奈川県立こども医療センター 循環器内科, 2.神奈川県立こども医療センター 新生児科)
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キーワード:

漏斗部心室中隔欠損症、胎児、ガイドライン

【背景】漏斗部心室中隔欠損症 (VSD)は, 大動脈弁逸脱や大動脈弁閉鎖不全を伴い, 手術介入が必要になることが多い疾患である。しかし漏斗部VSDは現在の胎児心エコーガイドラインで評価が推奨されている四腔断面や左室流出路像では見落としやすく、胎児診断率は非常に悪い。特にVSD単独では, 出生前の発見は困難である。【目的】漏斗部VSDの胎児診断の現状を明らかにすることで、目指すべきガイドラインの方向性を検討する。【対象と方法】2018-2024年に当院で心内修復術を行ったVSD単独例を対象とした。後方視的に術中所見によるVSDの分類, 胎児診断の有無, 基礎疾患の有無を含む診療情報を得た。VSDの部位はKirklin分類に準じて漏斗部, 膜様部, 流入部(房室中隔欠損型), 筋性部, 混合型に分類した。【結果】VSD単独例205例のうち, 48例が基礎疾患を合併していた(trisomy 21: 39例, trisomy 18: 1例, 22q11.2欠失症候群: 4例, その他: 4例)。分類は,漏斗部は38例(18.5%), 膜様部は143例(69.8%), 流入部は2例(1.0%), 筋性部は19例(9.3%), 混合型は3例(1.5%)であった。胎児期に部位に関わらずVSDが指摘された胎児診断率は, 漏斗部は3/38例(7.9%), 膜様部は26/143例(18.2%), 筋性部は3/19例(15.8%)であった。胎児診断された漏斗部VSDの内、胎児期から漏斗部VSDと診断されたのは1例のみであった。【考察】VSD単独の, 特に漏斗部VSDの胎児診断率は依然として非常に悪い。胎児診断された漏斗部VSDを後方視的に確認すると, 右室流出路像で漏斗部VSDが描出することができていた。本邦の胎児心エコーガイドラインで推奨されている断面では, 漏斗部VSDの診断は困難である。米国心エコー図学会によるガイドライン(2023)では右室流出路像の描出が推奨されており, 本邦でもスクリーニングに加えることが望まれる。【結語】胎児心臓スクリーニングに右室流出路像を加えることで, 漏斗部VSDの胎児診断率が向上することが期待できる。