講演情報
[I-P02-3-03]完全大血管転位症における出生前診断の影響 ~ 広い医療圏において予後改善に寄与するか~
○西村 和佳乃, 松尾 悠, 工藤 諒, 高橋 卓也, 齋藤 寛治, 桑田 聖子, 佐藤 啓, 滝沢 友里恵, 中野 智, 齋木 宏文 (岩手医科大学 小児科学講座 小児循環器病学)
キーワード:
完全大血管転位症、胎児診断、地域医療
背景:完全大血管転位症における出生前診断は大血管スイッチ手術後経過の悪化と関連するという報告が近年増加している。これらの報告では出生前診断に対する診療体制が確立している一方で、出生前診断がない症例の特徴の明確な記述がない。医療圏自体が成熟し、出生前診断されなくても緊急対応がそもそも可能な医療圏で対応されている可能性もある。方法:電子診療録の横断検索により2015年以降9歳以下の診察症例のうち当院で管理している完全大血管転位症1型症例とこれに準ずる症例は22例である。このうち出生前診断し分娩した症例は10例 (45%)であった。非出生前診断症例との生後早期から大血管スイッチ手術までの臨床経過を比較検討した。結果:出生前診断症例は非診断症例と比較し在胎週数 (38.4±1.2, 38.9±1.2 週)、出生体重 (2981±333, 3146±340g)、生後肺高血圧症が遷延した症例数 (2例、3例)、手術日鈴(8.3±1.6、9.9±3.3日)に差はなかった。Apgar score 5分値8点未満は非出生前診断症例中の2例のみであり、二次または三次医療施設までの搬送時間は4.5±2.9時間であった。臨床経過中に呼吸サポートを要した症例 (2例, 9例, p=0.030)、酸素飽和度低下に対して心房中隔裂開術を要した症例 (0例, 4例, p=0.044)ともに非出生前診断症例に頻度が高く、出生前診断がない症例は酸素飽和度が低く呼吸管理を要する傾向が強かった。結論:近年の報告と異なり、当院の完全大血管転位症は出生前診断と早産・低出生体重に関連はなかった。非出生前診断症例に呼吸管理を要する症例、低酸素飽和度に対して緊急心房中隔裂開術を行う頻度が高く、早期評価・早期プロスタグランディン使用が低酸素飽和度遷延の予防に寄与している可能性が示唆された。