講演情報

[I-P02-3-04]房室中隔欠損と三尖弁閉鎖Ic型との併発を胎児診断しえた一例

石戸 博隆, 岩本 洋一, 増谷 聡 (埼玉医科大学総合医療センター小児科小児循環器部門)
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キーワード:

完全型房室中隔欠損、三尖弁閉鎖、胎児診断

【はじめに】房室中隔欠損(AVSD)と三尖弁閉鎖(TA)の合併は極めて稀で、既報は出生後診断の数例に限られる。今回我々は、AVSDとTAの合併例を胎児診断したので報告する。【症例】在胎36週2日に胎児心疾患が疑われ当科を紹介受診した。胎児心エコーでは右側房室弁閉鎖、僧帽弁のuniventricular connection、正常大の左室から心室中隔欠損を介し低形成の右室と交通、右室から正常径の肺動脈が起始し、血行動態上はTA(Ic)を呈した。しかし、1)心房中隔一次孔欠損があり、2)右側房室弁は動揺するflap状の組織により閉鎖、3)僧帽弁-三尖弁成分が円弧状に配列したscooping形態、4)重度の僧帽弁逆流(MR)、などの所見を認め、AVSDとTA(Ic)の合併と診断した。左側相同の所見は認めなかった。MRのため徐々に心拡大を呈したが、胎児水腫徴候は出現せず、在胎41週0日、体重3241gで自然経膣分娩にて出生した。生後の心エコーでは胎児心エコーの所見に加え、心室短軸像にて僧帽弁cleftを確認し、またinlet VSDとASD(I)は一連であり、完全型AVSDとTA(Ic)の合併と確定診断した。早期より努力呼吸が続き、気管挿管のうえ外科治療施設へ転院とした。生後6日で肺動脈絞扼術を施行された。【考按】AVSDとTAの合併は検索の限り7例の出生後診断のみで、本例は初の胎児診断例と考えられる。TAの診断は容易であったが、意外に感じられるAVSD合併の診断には、心房中隔一次孔欠損やscoopingといった基本的な各所見を丹念に拾い上げ、統合して考えることで到達した。AVSDとTAの合併例の存在を認知していることは、今後同様な症例の胎児診断にあたり有用と考えられる。【開示】第31回日本胎児心臓病学会学術集会との重複投稿である。