講演情報
[I-P02-3-05]出生前ブリーフィングによる円滑なチーム医療:下心臓型総肺静脈還流異常合併単心室の治療経験から
○清水 大輔, 杉谷 雄一郎, 田中 惇史, 池田 正樹, 峰松 優季, 峰松 伸弥, 豊村 大亮, 渡邉 まみ江, 宗内 淳 (JCHO九州病院小児科)
キーワード:
胎児心エコー、総肺静脈還流異常症、肺静脈閉鎖
【背景】単心室(SV)に肺静脈閉鎖(PVO)を伴った総肺静脈還流異常症(TAPVC)の予後は悪いことが知られている。今回、胎児期に右側相同、SV、肺動脈閉鎖、PVOを伴った下心臓型TAPVCと診断され、出生前のブリーフィングにより円滑な診療を実践した症例を経験した。【症例】母は22歳、初産・シングルマザーで妊娠33週2日に他県産科から当院産科へ紹介された。肺静脈は門脈、細い静脈管を介して下大静脈に還流、1峰性の肺静脈血流(V=10cm/s)であり、厳しい予後を家族へ説明した。母は救命を希望し、小児循環器科・産婦人科・新生児科・心臓血管外科・助産師・手術室看護師・病棟看護師でブリーフィングを行った。厳しい予後だができる限り救命する事と生後の対応フローチャートを共有した。特にカテーテルのアクセスルートを確保のため臍カテーテルを留置する事、既報を参考に初期治療は静脈管ステントを留置する事、児の予後や母親の状況を鑑みて帝王切開は可能な限り避けることを共有した。また母は初産・シングルマザーで胎児の予後が厳しく、助産師・臨床心理士は母の心境を慮り、できる限り寄り添ってサポートした。児は妊娠40週6日、体重2826g、頭位経腟分娩で出生した。出生時のSpO2 86%(室内気)と状態は安定、フローチャートに準じて小児循環器科が評価(心エコー・造影CT)、新生児科が臍カテーテルを確保した。心臓血管外科と麻酔科、手術室看護師は緊急治療に備えた。胎児診断通り静脈管は狭小化していたが生後2時間以内に評価を終え、緊急でのステント留置は不要と判断した。日齢1(生後12時間)に全身麻酔で心臓血管外科待機のもと静脈管ステントを留置した。肺静脈狭窄は残存したが肺循環は破綻することなく、生後4か月でTAPVC修復術とBTシャント術を行った。【結語】胎児心エコーで診断・重症度の把握ができていたため、出生前から生後対応の具体的なブリーフィングを行い、円滑な診療につながった。