講演情報
[I-P02-3-06]胎児期から観察した右側大動脈弓のまとめ
○井上 奈緒, 中嶌 八隅, 宮崎 文 (聖隷浜松病院 小児循環器科)
キーワード:
胎児診断、右側大動脈弓、血管輪
【はじめに】胎児スクリーニングエコーが向上し、胎児期に大動脈弓異常を指摘される症例が増加した。今回我々は、胎児期にCHDを伴わない右側大動脈弓を指摘された児の出生後の診断と管理方法、経過を後方視的に検討した。【対象】2016年以降に産科スクリーニングエコーで右側大動脈弓の疑いを指摘され当科に紹介となり、当科の胎児心エコーにてCHDを伴わない右側大動脈弓を指摘した症例7例。完全内臓逆位2例は除外した。【結果】初回胎児エコーは中央値31週(23-37週)で、気管支が右側大動脈弓と動脈管に挟まれ血管輪を形成していると判断したのが4例、うち1例は分枝を確認でき完全鏡面分枝(後述C)と診断した。右側大動脈弓のみ確認でき、血管輪の形成がわからなかったのが2例、残りの1例は右側大動脈弓の疑いにとどまった。計画分娩例はなく、全例満期で出生した。出生後は全例NICUで管理を開始した。日齢0に心エコーを、日齢2-5に造影CTを施行し、病型の内訳は、A:左鎖骨下動脈起始異常とKommerell憩室形成が3例、B:完全鏡像分枝が2例、C:左鎖骨下動脈孤立症が2例で、全例が左動脈管で血管輪を形成していた。Aの1例は左総頸動脈欠損を伴い、Cの1例は左鎖骨下動脈が非常に細い血管で大動脈と連続性を保っていた。胎児心エコーでringの形成を指摘できなかったのはすべてAだった。5例で染色体検査を施行し、うち2例が22q11.2欠失症候群(いずれも病型はA)だった。血管輪症状を呈した症例はなく、食道閉鎖合併の1例、鼻咽頭閉鎖による哺乳困難の1例を除く5例はCT検査終了後、母子同室管理としていた。【考察】右側大動脈弓は血管輪症状を呈する場合があり胎児期の指摘と正確な病型分類が望ましいが非常に難しい。大動脈弓異常は多彩で、遺伝子異常を伴う症例もあり、出生後の大動脈弓異常の正確な診断と慎重な経過観察が望ましい。